第39章 陽だまりの先へ(終)※
胡蝶が言うには、ほの花の体は治癒能力の使い過ぎで疲弊しきっているらしい。
目が覚めなかったのも体が休息を求めていたからだと言うが、使用頻度から言うと計算上はそれでも足りないと言う。
年単位で体調は良かったり悪かったりを繰り返すかもしれないが、その都度対応して無理をしないように過ごすことが絶対条件とのこと。
「体調の変化を見たいので一週間ほど入院してもらって、その後はお帰りいただいてもいいですがどうされますか?」
「…?え、と、帰る?ど、何処にですか?里は無くなったんじゃ…?あ…!家があるんですか…!?」
まぁ、そうなるわな。
笑顔のまま固まってしまった胡蝶が目線だけこちらに向けてくるので、どうしたもんかと俺も頭を掻いた。
正直、連れて帰りたいのは山々だが、ほの花的に俺は知らない男。
いくら元師匠とはいえ、俺のところに帰ると言われて「はい、そうですか」となるかどうかは別問題だ。
「…あの、ですね?あなたは宇髄さんのお屋敷で住まわれていたので、帰るなら宇髄さんのところですが…。」
「え?!宇髄さんのお屋敷ですか?!」
胡蝶の言葉に目を見開いて、俺の方に目を向けるほの花。
驚くのは当たり前だ。目をパチクリとさせながら動揺しているのが見て取れる。
「…あー…、突然、俺ん家に来いって言われても困るなら此処に居てもいいぜ?」
本当ならば連れて帰りたい。
連れて帰りたいが、今日目が覚めたばかりで、いろんなことを知らされたせいで精神的にもつらいところだろう。
いつもの俺ならば「お前は俺んとこにいればいいんだ!」と無理矢理連れ帰るところだが、今は俺のことを覚えていない。
無理矢理連れて帰ったら人攫いもいいところだ。
「あ、…えと…、ちょ、ちょっとだけ時間もらってもいいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。いいですよね?宇髄さん。」
「ああ。ほの花の好きにしたら良い。」
考える時間は誰しも必要だ。
流石に今日の今日で知らない男の家に行くかどうか決められないだろう。
俺は胡蝶の言葉に頷いた。