第39章 陽だまりの先へ(終)※
「騒がしくて悪ぃな。」と後輩の粗相を詫びてやれば少しだけ微笑んで首を振るほの花。
分からないことだらけなのにこうやって気を遣って笑顔を見せてくれるところは昔から変わらないんだな。
「あー、何から話せばいい?鬼?鬼殺隊?」
「えと、鬼って…?鬼ごっこの鬼じゃない、ですよね?」
「鬼ごっこて…。」
「す、すみません…‼︎その鬼くらいしか思い浮かばなくて…‼︎」
たまに意味のわからない小ボケをかましてくるところも変わらない。
やはり此処にいるのはほの花だ。
19歳ということは俺のことどころか、鬼殺隊のことも鬼のことも知らない。
何なら家族も生きていると思っている筈だ。
俺は鬼舞辻無惨のことから鬼殺隊のことまで細かく話してやった。
さっきまでは目がなかなか合わなかったと言うのに話をしてやればきちんと目を合わせて相槌を打ちながら聞いてくれるほの花。
鬼のこともピンと来てなかったようだけど、舞扇が日輪刀だということを伝えれば少しだけ納得してくれたようだった。
「あれで鬼が斬れるんですね…!最近は踊るか暑いときにあおぐためにしか使ってなかったです…。」
「ハハハッ、何だよ、それ。もったいねぇな。折角いい武器なのによぉ!」
ああ、この感じ。
ほの花と出会った時の天真爛漫さが甦ってくる。そうだ、ほの花はこんな感じだった。
それが里以外の人間と触れ合う内にどんどん空気を読むようになって、気付けば天真爛漫さは薄れて、遠慮の塊みたいになっていた。
久しぶりに昔のほの花に会えて、俺は嬉しかった。ドキドキと胸が高鳴るのはやはりほの花はほの花だから。
結局、俺はいつほの花と出会っても同じように好きになるだろう。
「あの、此処は里の近くなんですか?だから正宗達は宇髄さんのお家に住んでるんですか?」
「あー…いや…そうじゃ、ねぇ。」
此処は里から全く近くない。
いや、それどころか遠い。
だけど、それを話すということはほの花にとってつらい事実を知るということなのだ。