第39章 陽だまりの先へ(終)※
「わ、わかります…‼︎あの三人のこと、ご存知なんですか?」
「ああ。いま、同居人なんだわ。家族みたいなもんだな。」
「え…?かぞく…?此処…って…?」
二ヶ月間生死を彷徨ってやっと目が覚めたら記憶が飛んで知らない場所、知らない人ばかりに囲まれたら心細いのは当たり前だ。
正宗達の名前を出せば、漸く笑ってくれたが次から次へと問題は山積みだ。
ほの花からしたら俺たちが誰かと言うことも然り、此処はどこだ?と言うことのが知りたいことだろう。
突然、正宗達の家族になった知らない男のことを理解するためには知っておかなければならないことだ。
「此処は蝶屋敷。鬼殺隊蟲柱の胡蝶しのぶの屋敷だ。まぁ、入院施設…?みたいなもんか?」
隣で黙ったまま聞いていた竈門にそう尋ねれば「そ、そう、ですね…!」としどろもどろになりながらも答えてくれる。
(…いや、お前動揺しすぎだろ。)
俺よりも遥かに狼狽えている竈門の様子を見ながらほの花に再び向き合うと言葉をつづける。
「お前は鬼との戦闘の後、治癒能力使い過ぎて生死を彷徨っていたんだ。」
「…きさつ、たい?お、おに?……っ、て、え?!ど、どうして、その力のこと…?!え?!」
鬼殺隊も鬼も分からない。
だが、それよりも驚愕していたのは治癒能力のことを俺たちが知っていたと言うこと。
目を見開いたかと思うと、ガバッと急に起き上がってきたほの花に驚いたが、それは数秒のことだった。
二ヶ月間も体を起こしていなかったのに急に動かせばフラつくのは当たり前。
せっかく起き上がった体が横に倒れて来たのを慌てて受け止めてやる。
「おいおい…、生死を彷徨ってたっつったろ?いきなり動くな。まだ安静にしてろ。」
「す、すみ、ませ…!」
抱き止めた体をゆっくりと寝台に戻してやると恥ずかしそうに目線を外すほの花だが、顔色は其処まで悪くない。
それだけでもホッとした。
「…竈門、胡蝶を呼んで来てくれ。ほの花の目が覚めたって。」
「あ…は、はい!すぐに!」
扉をガンガン乱暴に開け閉めさせ大きな足音を立てて、走っていく竈門を見送るとほの花にもう一度向き合った。