第38章 何度生まれ変わっても
「あ、あくまで仮説…ですけど…。」
そう言って竈門はぽりぽりと頬をかくが、俺は結構高確率で事実なのではないかと思っていた。
どんどん視界が鮮明になっていくような感覚は知らなかったほの花像も一緒に霧が晴れていくようだった。
秘密にされたことは正直、寂しい気持ちが大きい。だが、ほの花もまた親を鬼に殺された被害者であり、腹にずっと鬼への憎悪があったのかもしれない。
己の血がその役に立つと知れば、藁をも縋る思いだっただろう。
そう考えると、ほの花は一人でいろんなものを背負い込みすぎて冷静な判断ができなくなっていた気もしないでもない。
「…いや…、教えてくれてありがとな。」
「いえ…!そんな…‼︎」
竈門もまた鬼に家族を殺されて妹を鬼にされた。ほの花もまた家族を殺されて父を鬼にされて自ら頚を斬った。
数奇な運命が二人を同志のように引き合わせたのかもしれない。
「ほの花…、いつも宇髄さんのこと幸せそうに話してくれたから…、目が覚めるといいな…。俺の怪我にも毎日塗ってくれてたのはほの花の傷薬らしいし…!お礼も言いたいんです…」
「……ハハ、だってよ…?ほの花。お前、早く起きろよな〜。俺もそろそろ声が聴きてぇんだけど。」
竈門と一緒にほの花に目を向けた瞬間、ピクリと動いた手に俺も竈門も目を見開いた。
「…え?!ほの花…?う、宇髄さん…!今…?」
「わ、分かってるわ!!ほの花!おい、ほの花?!」
動揺しすぎて声が吃ってしまったが、寝台に横になるほの花の肩を優しく掴むと軽く揺すってみる。
「…ほの花…!こっちだ!戻ってこい!ほの花…!!」
すぐそこまでほの花が来ている気がした。
ほの花、お前は今いるところはどんなところだ?
暗くて、心細いところだろ?
此処にはお前の知り合いがたくさんいる。
だから戻ってこい。
俺も…いる。
もう二度と手放さない。
お前のこと忘れたりしないから戻ってこい。
心配しなくて良い。
今度は俺が約束を守ってやる。一生お前のそばにいる。