第38章 何度生まれ変わっても

「…もしかしたら…なんですけど…そのことをほの花に言っていたとしたら…ほの花が宇髄さんの腕を治すきっかけになったのかな…って。」


　俺は目を見開いた。
それは思ってもいないことだったが、妙に的を得ていて全ての線が一本につながるような気がしたから。


上弦の陸だ。
一番下の上弦を倒すために此処までの死闘を繰り広げた後に自分のせいで総攻撃を受けると言われたら、アイツならどうする？

お前なんか生まれてこなければ良かったと言われたら？

何人もの人間があの戦いで死んだであろう。
今度は総攻撃を受けたら一般人はもっと死ぬかもしれない。
鬼殺隊も無事では済まない。
下手したら壊滅だ。

悲観して最期に俺の怪我を治すことで命を終えようとすることも考えられる。
足手纏いになりたくないといつも考えるような奴だ。

戦力を確保するために俺との関係性も消してしまうような奴だ。
再び俺の戦力を確保するために己の命を懸けて腕を治すことも考えられるのではないか？


"私が選択を誤りました"


意識を失う間際にほの花はそう言った。
それは今していることは選択としては間違ってるけど、こうせざるを得なかったということなのか？
気にするなと言ったのは自分で決めた選択だからと言うこと？


「…そうかもしれねぇな。コイツはド派手に馬鹿な女だ。」


「そんなこと、ないです。少なくともほの花はまだ生きている。それが鬼の脅威になるのは間違いありません。」


竈門の目は未来を見据えている。
ほの花のしたことは確かに自分の言う通り正しい選択とは言えない。

でも、追い詰められた時に、最期に考えたのが俺の腕を治したいだったのならば、ほの花のド派手な愛を感じる。


そこで鬼舞辻無惨に臆せずに自ら攻撃を仕掛けたりして自爆するような愚かな行為をしなかっただけ良かった気もする。


その時のほの花の心境はほの花にしかわからない。


起きたら徹底的に問い詰めてやるしかないな。
正宗達も説教を垂れると言っていたし、本当に泣かせちまうかもしれないと思うと、考えるだけで顔を引き攣らせるしかない。