第38章 何度生まれ変わっても
俺は話した。
ほの花の血の秘密を。
治癒能力と相反する対鬼用の特別な稀血について。
ほの花が鬼に害悪だと言われていた理由を。
竈門妹は鬼だし、よく考えたらほの花と仲が良いのであれば知っておく必要があるだろう。
万が一、ほの花の血を禰󠄀豆子が触れたら大惨事になるのだから。
「…そう言うことだったんですね。だから…あの時、あんなこと言ってたんだ…」
「あんなこと…?」
俺は竈門の言葉に首を傾げた。
すると、意を決したように俺を見上げると言葉を紡ぎはじめる。
「頚の確認をしに行ったら…あの二人まだ生きていて…崩壊はしてたけど少し話したんです。その時、ほの花が害悪だってあんな女生まれてこない方が俺たちのためでもあるって言ったんです。」
「……は?」
それは俺の怒りを買うのに十分すぎる内容。誰の女が生まれてこない方が良かっただと?ふざけやがって…!
ほの花が生まれてきたからこそ俺は本気で人を愛することができたと言うのに。
腑が煮えくり返る様を何とか諌めながら竈門の話を聞く。
「…"あの女のせいで総攻撃を受けて死ぬかもしれないのに"って言ったんです。」
「総攻撃…?ああ…鬼舞辻無惨に伝わって…ってことだろ?それはお館様も危惧していらっしゃった。心配しなくてもコイツの目が覚めたら俺が守る。」
しかし、竈門の表情は悲しそうに眉を下げたまま、俺の腕に注がれている。
それはほの花が治してくれた左腕。
「…その時、ほの花の匂いがしたんです…。あ、俺…鼻が効くので…!あそこにほの花がいたのは間違いないと思うんです!」
耳が良いやら、鼻が効くやら、野生の猪やらこの三人だけ動物園でもやってんのか?
確かに竈門は鰻屋に行ってた時も匂いがどうのって言っていたのを今思い出す。
どうせ俺の嫉妬が匂いでわかっていたことだろう。
「…あの鬼のところにほの花が?」
確かにほの花はあの日、直ぐに俺のところに来なかった。
どこに居たのかは分からない。
でも、そこに居たのであれば髪を切ったのはあの鬼かもしれないと沸々と湧き上がる怒りを再び腹に感じたが、竈門は思ってもいないことを口にした。