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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第38章 何度生まれ変わっても





"宇髄さんは本当に忘れていたんですか?"


ああ、忘れていたよ。
でも、忘れていなかったように見えたのならばそれも正解だと思う。

やはり俺は脳で考えて理性的にほの花を好きなわけじゃない。心と体が共にほの花を求めているのだ。だからこそ忘れていても体に残った感情が音となって善逸に聞こえてきたのだろう。
それは俺の記憶の音。
耳が特別良い善逸だからこそ気付いたこと。


「俺らしくない…か。」


「…すすすすすみません…!!い、言い過ぎましたァァァ!!」


「俺は確かにほの花に近付く男は死ぬほど腹が立つ。俺の女に触ろうものなら全力でぶっ殺したいと思っちまう。」



俺が感じていたのは違和感じゃない。
その大部分は苛立ちだ。
あの時の俺は毎日毎日知らない女が頭の中にいた。こちらを見て口元だけ見えるその女のことがいつも気になって仕方なかった。
見覚えのある髪色に体型は今思い返せばほの花以外の何者でもないのにあの時は忘れ薬の効力なのかそこだけどうしても思い出せなかった。

最初はただの違和感程度だったのかもしれない。
でも、一つ屋根の下に共に暮らすほの花と顔を合わせる頻度が増えれば増えるほどその想いに気付かないように必死だった。
顔を見ればドクンと跳ねる心臓にどれほど振り回されたか。
だけどそれは仕方ないことだったのだ。
心と体の両方が求めていたのだから。


「だからよ、どこかの誰かさんが鰻を食いに行った日に俺の女に抱きついていたことをいま、思い出しちまったんだけど、血祭りにあげてもいいと思うか?」


「………ソソソソソレハヨクナイトオモイマス」


「そうか?俺の女に終始抱きついていた不届き者だ。万死に値するとは思わねぇ?」


「マッタクオモイマセン」


音柱として戦った日々は忘れもしない。
音の呼吸を使って何人もの鬼の頚を狩ってきたからこそ、音によって助けられたのかもしれない。

後退りをして猛烈な速度で部屋を出て行った善逸に少しだけ口角を上げると小さく「ありがとな」と礼を言う。
耳の良いアイツなら聴こえているだろう。


同じ呼吸の使い手ではないが、頼りになる後輩の一人に違いないのだから。


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