第38章 何度生まれ変わっても
俺の隣まで来ると寝台に横付けされている棚の上に何かを置いた善逸。
ほの花の顔を見ていれば嫌でも視界に入ってきたそれは白い花。
「……花?」
「え…?あ、は、はい!ほの花、白い花の髪飾りと耳飾りをいつも付けてたから…白い花が好きなのかと思って…!白い秋桜が綺麗に咲いてたから摘んで来たんです。」
善逸が言っていたそれは俺が贈ったもののことだろう。
髪は短くなってしまっていたが、それは最後まで髪に付いたままで此処に運ばれてきた後に寝るのに邪魔だから外してやった。
俺は体を起こすと、懐にいつもしまってあるそれを取り出すと善逸に見せる。
「これだろ?」
「あ…!それです!」
「…俺がやったんだわ。コイツに。見立て良いだろ。」
「え、あー…そ、ソーデスネ…。」
心底嫌そうな顔をしてくる善逸だが、そういうのは隠すものだろ。
上官に向かって……まぁ、もう柱じゃねぇから上官も何もないか。
いつもならばド派手に言い返しているが、今日はそんな気分じゃない。
見るからに弱っているほの花を見るとそんな気分じゃないのだ。
しかし、花を置いてもまだ帰ろうとしない善逸を不思議に思い、再び目を向けるとバチっと目が合った。
その瞬間、物凄い速さで逸らされたが、目が合ったことを隠せるわけがないだろう。馬鹿なのか?コイツは。
「……何だよ。まだ何かあんの?邪魔すんなよな。俺とほの花の逢瀬を。」
「…宇髄さんって、ほの花のこと思い出した…んですか?」
「……?!…ンだよ、お前も知ってたのか。ほの花が俺にしたこと。」
てっきり柱の間にしか知られていないと思ったので驚きを隠せない。
まぁ、コイツも竈門炭治郎と同じく同期みたいだし、仲は良かったんだろう。
自分の知らない交友関係を知るとムッとしてしまうのは通常運転だが、どうにもこうにもほの花の今日の様子を見てしまうと怒ることすらできない。
そんな暇があったら一分一秒でも生きているほの花を視界に収めたいだなんてコイツが生きることを諦めたような考えが頭をよぎってしまう。