第38章 何度生まれ変わっても
お館様に柱を辞めると言った三日後、俺は蝶屋敷を訪れていた。
退院してからも毎日のようにそこに通い、一日の大半をそこで過ごすのは日課になりつつあった。
変わらずほの花は熱は高い。
もう十日になる。四十度の熱も変わらず続いていて、いくらほの花が鍛錬をしていたとは言えだんだん体力が無くなって来ているように見える。
栄養剤や水分を点滴から摂取していても、見るからにほの花は弱っていってる気がした。
毎日毎日会いに来て手を握ったり頬を撫でたりしてみるが反応はない。
ただただ熱い体をさすってやることしかできない自分にため息ばかりついてしまう。
こうやってほの花に引っ付いて一日が終わると言う何とも腑抜けた生活を送っているのだが、今日は突然来客があった。
──ガラッ
「ヒィッ!!」
扉が開く音がしたかと思うと、直後に悲鳴が聴こえてきたのでほの花の寝台に突っ伏していた顔を面倒だが向けてみた。
すると、そこにいたのは見たことのある黄頭で何に驚いたのか尻餅をついてこちらを見て震えている。
「……何だ、お前か。」
「なななな何だって…!!いつもみたいな煩い音がしないから誰もいないと思ったらいたんですか?!び、ビックリした…。」
「……音?」
どうやら驚いたのは俺を見たかららしいのだが、そんなこと言われてもここ数日毎日来ているし、先客は俺。
後から来たお前に驚かれたとしても知ったことではない。
それにしても音って何だよ。
「あ、え、えと…俺…耳が凄く良くて…、その人の音を聴き分けられるんですけど…あまりに宇髄さんぽくない音だったからいると思わなかったんですよ。」
「へー…すげぇなー…」
相手が善逸だと分かれば再び顔の向きをほの花に変えて、肩口で切られてしまっている髪に触れてみる。
俺も耳は良いが、流石に人の音はわからねぇ。
足音くらいなら聴き分けられるが。
コイツ不細工で弱虫な奴だと思ってたが、あの戦いでもなかなかやるし、こんな特技あるならば最初の印象よりも随分と良い。
そんなことも口に出さずに頭の中で考えていると迷いながら近寄ってくる音が聴こえた。