第38章 何度生まれ変わっても
「…天元様、心配には及びませんよ。」
次に口を開いたのは雛鶴だった。
穏やかな表情をして箸を置くとこちらに視線を向ける。
「私も…私たちもほの花さんともっと仲良くなりたいって思っていたんです。」
それに呼応するようにニコニコしながらまきをと須磨と口を挟む。
「そうそう!ほの花さん、いつも遠慮ばっかりして、甘えてくれないのがずーっと不満だったんです!」
「それなのに瑠璃さんとはやたらと仲良くてヤキモチ妬いちゃいましたよぉ!!私もあんな風に仲良くしたいのにぃ!!」
そう不満を露わにする三人に目を見開く。
こんなことも話さなければ分からない。
腹を割って話さなければ気づかないこと。
遠慮ばかりしていたほの花に気を遣っていたのはこの三人も一緒。
全てはちゃんとこう言う場を設けなかったことに問題がある。
勝手に決めて、勝手にほの花を恋人にして、勝手に溺愛してこれ見よがしに見せつけようとした俺に問題がある。
「…帰ってきたらそう言ってやってくれ。きっと喜ぶと思うぜ。アイツも本当は寂しかったと思うからよ。」
「はい!」と言う元気な声に救われる。
でも、喜ばしいこの報告もやはりほの花と二人で並んでる受けたかった。
そうすることでほの花もまた救われると思うから。
我儘を言わなかったほの花の唯一の我儘が記憶を消して自分のことを忘れてもらうということなんて悲しすぎるだろ。
此処からが俺の役回りだ。
俺は喜びを噛み締めながら目の前に広がる食事を新たな家族と共に堪能した。
一人不在だが、いずれ俺の隣に戻ってくる。
そうして揃ってこそ俺の家族だ。
「…あ、そういや俺、柱やめてきたからよ。」
「「「「「「急に?!?!」」」」」」
「あ?察してたんじゃねぇの?」
「そう言うことではなく!話の流れっていう言葉をご存知ですか?」
正宗が笑いながら突っ込んでくるが、俺たちの中の重要度がほの花の忘れ薬の事件のが
高かっただけの話。
柱であろうとなかろうと、鬼殺隊に今後も関わって行くのは変わらないし、鬼舞辻無惨が死んでいない以上、俺も最期まで別の形で尽力するまでのことだ。