第38章 何度生まれ変わっても
「ただいまー…」
久しぶりに我が家の敷居を跨げば賑やかな声が聴こえてくる。俺の声が聴こえたのか襖が開いた部屋からは見知った六人が飛び出してきた。
口々に「おかえりなさい!」と言われると照れ臭いが、此処に帰って来られて本当に良かった。一緒に帰りたかった人物はまだ意識不明だが…それでも帰る場所があると人間ホッとするものだ。
「天元様!!お帰りなさい!遅かったですね?待ってたんですよ〜!」
「悪ぃな、まきを。お館様のところへ行ってたからよ。」
それだけでピンと来たのか少しだけ狼狽えた面々に口角を上げて部屋に入るよう促した。
コイツらにもちゃんと報告しておかないといけないな。
俺がした決断を。
それにしても…正宗達に至っては元々の主人は俺の腕を治したことで生死を彷徨っているにも関わらず、少しも此方を責めるそぶりもしないのが返って申し訳ない。
変わらない笑顔を向けてくれる三人に少しだけ気まずくて目線を外してしまったが、いつもの席に腰を下ろした瞬間、先に声をかけてきたのは正宗達だった。
「…あの、宇髄様。」
「ん?」
「もし、ほの花様がこうなってしまったのが自分のせいだと思っているなら即刻やめて下さいね。」
「へ、へ…?」
コイツらならそう言ってくれるとは思ったけど、何とも突然すぎて上手く返答ができずに狼狽えてしまった。
「ほの花様が望んでやったことです。万が一、それで死んだとしても後悔はないでしょう。宇髄様が気に病むことはありません。」
「お、おい…!縁起でもねぇこと言うなって…!」
「だったら…どうか宇髄様もそんな申し訳なさそうな顔をするのをおやめ下さい。我々があなたを咎めたりするような事ではないですから。」
悲しみに暮れて、後悔をする日々は負の連鎖を引き起こすだけ。
それが憎しみや僻みに変われば鬼が増えるようなものだ。
「…悪ぃ。そうだな。ほの花はきっと目を覚ます。それまで待つからお前らもそのつもりでな。」
「きっとほの花様のことだから『お腹すいた〜!』って起きますよ。豆大福買っておかないとですね。」
「そうだな。しゃーねぇから50個くらい買ってやるか!」
俺が悲しみに暮れないのも周りの人のおかげ。
だからほの花も心配せずに目を覚ませ。