第38章 何度生まれ変わっても
「さて、どこから話そうか…。」
考えるように天井を見上げたお館様はゆっくりとその視線を俺に向けてにこりと微笑んだ。
長時間話すのはツラいだろうに、お館様はその後知っていることを全て俺に話して下さった。
神楽家に女児が産まれた時にほの花の両親がお館様に一報をくれたこと。
陰陽師の里ぐるみでそれを隠すためにほの花本人にも能力の秘密は知らされなかったこと。
治癒能力を使ってしまった場合その都度忘れ薬で忘れさせていたこと。
ほの花の稀血を使って鬼舞辻無惨を倒すための毒の開発が急がれていたこと。そして志半ばでほの花の母親も亡くなってしまったこと。
「…だからね、神楽家が全滅したと聞かされた時、頭が真っ白になったよ。希望が潰えたと思ったから。でも…数日後にほの花が訪ねてきた時、心の底から喜びで打ち震えた。天が自分達に味方したとすら思ったよ。」
ああ、だからお館様は自分の代で鬼舞辻無惨を倒そうと必死になっていたのだろう。
長い間生まれなかった希望の光が生まれて、そしてまだ生きている。
「…なるほど。では、毒の開発もどこかでされているのですか?俺はほの花からそんなことは聞いたことないんですが。」
「ああ…それは、その内分かることだから僕から言わないでおくよ。」
「え…?」
全て話すと言ってくれたのになぜそこだけ隠すのか首を傾げるが、お館様の表情が穏やかなので悪いことではないということだけは分かる。
気にはなったが、そのうち分かると言うことならば焦らずに待つことにした。
「…天元、ほの花の目が覚めたら君に頼みたいことがある。」
「…はい。」
「ほの花を守ってやって欲しい。」
「……?はい。」
もちろんほの花のことは守るつもりだった。
そもそも俺が一番守りたいものだし、柱をやめたとしても大事な女は守れる。
もうなりふり構わずほの花だけを守ってやれるのだ。