第8章 愛し君と…(※)
したことのない濃厚な口づけに夢か現実かも分からなくなっていた私は宇髄さんの言葉によって覚醒したと言える。
「待ってやろうと思ったのによ」と言った彼は呆れてように私を見ていて…でも、その表情はどこか真剣で胸をキュッと締め付けた。
「…え、えと、宇髄、さん?」
「もう待てねぇぞ?お前が煽ったんだからな、俺を。わかってんの?」
何がどう彼を煽って、
何を待てなくなったのか
分からないわけではない。
でも、どう反応していいのかも分からずに目線を彷徨わせる。
背中と膝裏には彼の腕にガッチリと掴まれていて逃げ場はない。
逃げるつもりは毛頭なかったが、彼に包まれている今の状況がこれから起こることを予見させて再び体が熱くなってきた。
どう返事するのが正解かわからない。
わからないけど…
このまま何もせずに終わるのは嫌だった。
どうせならこのまま彼に全てを教えてほしいと願ってしまっている。
私はどうしたらわからないながらにそのまま彼の首に抱きついた。
「…宇髄さん、好きです…。」
本当は見られるのが恥ずかしかったというのもある。彼の視線が熱っぽくて恥ずかしくなってしまったから。
でも、離れたくないというワガママな自分の心に従うためにはこうするしかなかった。
「…ほの花、按摩はなしだ。俺が一番欲しいものをくれ。」
そう言うと宇髄さんは私を抱き上げたまま立ち上がると、数秒後背中に柔らかい感触を感じた。
顔を上げるとそこには宇髄さんの顔。
布団と彼に挟まれている状態は恥ずかしくてたまらないのだが、宇髄さんが真剣に私を見てるので目を離せない。
そんな風に見つめられたらもう後戻りなんてできない。
「…愛してる、ほの花。お前が欲しい。」
そう言うとサラリと柔らかい髪が私の頬に落ちて、その後に熱い唇が首筋に落ちてきた。
初めてそこに感じる唇の感触がゾクゾクとして少し震えてしまった。