第38章 何度生まれ変わっても
聞いてしまえば…ほの花の口から聞きたかったと言う欲はある。
でも、今更どうしようもならないこと。
負債が溜まることを万が一知っていたとしてもこの二人が結託していたら俺は気付けなかったかもしれない。
もうため息しか出ない。
普通の呼吸はどうやってしていたんだ?と思うほどに。
「まぁ、そんな悲観なさらずに。ほの花さんから聞いていたことでお兄様の怪我を治した際、宇髄さんよりも軽傷で三日間寝込んだと言っていました。」
「三日…今日で…三日目か。でも、俺より軽傷ならあんまり意味ねぇっつーか…参考になんねぇんじゃ…?」
「いえ、なります。負債の時の熱はある一定のところまで上がり切るとそれ以上は上がりません。しかしその熱で数日続きます。そしてある日突然何の前触れもなく下がるんです。」
そう言われて気づいたことがある。
確かに最初の任務の後、発熱した時ほの花はなかなか下熱しなかったが、ある日突然下がったからと言って"迎えに来い"と言われたのだ。
昨日まで高熱だったのに不思議に感じたが、胡蝶が大丈夫というのならば、いいかと思ったのを思い出す。
「…それを聞いて納得したぜ。要するにこの熱が下がることはなくて、ある日突然下がるっつーことな。」
「そういうことです。そして四十度という高熱ですが、それ以上は何度計っても上がりません。ということは…此処を乗り切ればほの花さんは助かる可能性が高いです。」
無意識に拳を握りしめた。
少しでも希望があるなら、今はそれに縋りたい。
心臓が止まったほの花を再びこの目で見るのはツラい。
何度だって蘇生してやるとは思っているが、できることならばこのまま目が覚めて欲しい。
その瞳に俺を映して笑って欲しい。
「…絶ッッッ対ェ諦めねぇ。」
「ええ。そうしてください。あなたが諦めた時…ほの花さんの命も尽きてしまう気がします。」
「怖ェこと言うなっつーの。ま、諦めねぇからコイツは死なねェ!」
知らなかったことが多かったのは悔しいし、腹立たしい。
でも、やはり今、心で思っていても意味がないのだ。
兎に角、早くほの花と話したい。