第38章 何度生まれ変わっても
「…宇髄さんには言えていなかったですが、今までも能力の使いすぎで熱が出たことは何度かあります。」
それを聞いて深いため息を吐くが、流石に何となくそうだろうな、という予測は経っていた。
そうでなければ"治り"が遅すぎると勘繰ったことも何度かあったからだ。
「最初は…はじめての任務の時か。」
「あら…お気付きで…?」
「確信したのは今し方だ。解熱剤を飲んでんのに熱が下がらないなんておかしいだろうが。」
そう。
あの日、胡蝶からは月経痛の腹痛で倒れたと俺に言っていた。熱が出たのは雨に濡れて体が冷えて風邪を併発したからだと。
だが、痛み止めは解熱効果もあると言うのに腹痛は治ったのにも関わらず、熱はその後数日続いていた。
おかしいと思いながらも俺は医療者ではないし、最も詳しい二人が揃いも揃って同じ見解であれば疑う理由などなかった。
それを考えれば二人が結託していたと言うことならば納得できることばかりだ。
熱が出ても入院すら勧めずに家に帰っても良いと言われたこともある。
それは力を使ったせいで熱が出たわけではないから解熱剤が効くとわかっているからだ。
当時の俺はその差など分かるわけもなく、同じように熱が出ているのに"何故今回は入院しなくていいんだ?"と不思議に思っていた。
「あなたに心配かけたくないけどお館様には力を使わないと…と本能的に感じる場面があったようです。お兄様の大怪我を治した時に同じように寝込んで薬は効かなかったと聞きました。」
それも自分は知らない事実。
ほの花の兄の怪我を治していたことも。
それで解熱剤が効かないと知ったことも。
何もかも俺は知らなかった。
「そうか…。なーんかよ…、俺って…ほの花のこと…全然知らなかったんだな。」
何で言ってくれなかったのだとほの花を責めたい気持ちも少なからずあるが、それよりも知らなかったことも多いのに一番ほの花のことを知ってると思っていたことが情けない。
俺もまた怖かったのかもしれない。
踏み込むことに。
昔、ほの花が俺の過去を知ろうとしなかった時のように。
知らなくてもそばにいる。
それだけでいい。
其処に重きを置いていなかった。