第38章 何度生まれ変わっても
ほの花の気持ちの本当のところは正直分からない。
ただ其処に悪意などはないことだけは明白だ。
胡蝶の言うように何があったとしても俺に死んで欲しくなかったからというのが理由ならば、自分だってほの花に同じような感情を持っていたのだから理解できるから。
「…わぁーった、わぁーった…。とりあえず今は怒りを鎮めておくわ。ほの花にも言い分はあるだろうしな。」
「そうしてください。結果だけでなくほの花さんの其処に至るまでの過程も少しは理解してあげて下さい。今度は本当に捨てられてしまいますよ。」
「ってぇええ?!はぁ?!捨てられねぇわ‼︎捨てられるわけねぇだろ?!コイツはド派手に俺のこと愛してんだわ‼︎」
「そう思ってるなら穏やかな感情でほの花さんを見てあげてください。毎日毎日眉間に皺寄せて。そんな表情の恋人に睨まれたら起きたくても起きられませんよ。」
小さな胡蝶に見上げられるようにして、ビシッと眉間に指を差されると慌てて其処を手で覆って隠す。
しかしながら、冗談だとしてもほの花に捨てられるなんてことは御免被る。
ため息を吐いて、再びほの花に目を遣ると荒い呼吸をしながら胸が上下に動いていた。
意識はないが、体は悲鳴を上げているに違いない。四十度の熱は容赦なく続いているし、呼吸も苦しそうだ。
怪我のせいで少しだけ発熱した俺ですら昨日まで体が怠かったのにほの花は俺よりも更に二度ほど体温が高いのを耐えている。
どれほどツラいか。苦しいか。
想像すらできない。
それでも目が覚めた時、確かに俺が怒っていたら寝覚めは最悪だ。
「…それは…善処するけどよ…。あーーー!つーか、まだ熱下がんねぇの?!せめて熱だけでも下げてやりてぇのによ。」
「…上がり続けていた熱が少し横ばいなので今日あたりが峠かもしれません。」
「それはどういうことだよ。」
「不確定要素が多いですが…今日明日を乗り越えたら少しだけ希望が持てるかもしれないと言うことです。」
こんな高熱が続いていると言うのに胡蝶がそんな期待をさせるようなことを言ってくれるので俺は口元がにやけるのを止めることができなかった。