第38章 何度生まれ変わっても
「宇髄さんもツラかったことと思います。でも、ほの花さんだって同じようにツラかったということを忘れないであげてください。」
「………。」
「結果として…宇髄さんが柱を引退することになるのならば…、確かにこの一連の出来事が必要だったか今となってはわかりません。でも…いつだってほの花さんはあなたのことを考えていましたよ。」
「それでも…腕治すのは…いらねぇだろうが…」
ほの花が治してくれた左腕はぎこちなくは動くが、右手よりは自由は効かない。
柱として第一線で戦うのはもう無理だろう。
そして…伊黒が言っていたようにほの花の目が覚めたらもう一度治してもらうと言うのはどう考えても無理だ。
あの時ですら反動があるのを知っていたから止めたが、それが負債として残っていくなんてことは知らなかった。
それならば、余計にもう使わせられない。
誰にも分からないことだが、ひょっとしたら命を削ってくれているのかもしれない。
万が一、そうならば今後一切誰にも使うことを許さない。
俺の腕だって治す必要はなかった。
どうしても其処だけ納得ができない。
すると、ほの花の顔の消毒を終えた胡蝶がこちらを見て微笑んだ。
「宇髄さんならどうしましたか?その場でほの花さんが同じ状況なら腕を治しましたか?」
「…それは……」
二の句が告げなかった。
即答できなかった。
自分が治癒能力を使えたとして、ほの花が同じように腕を斬り落とされていたら…?
そんなこと考えるまでもなかったから。
「……そういうことですよ。理屈じゃないんです。」
長い沈黙の末、何も発することができない俺に胡蝶がそう告げた。
必要なかった。
して欲しくなった。
お前が傷つくくらいなら。
でも、逆の立場なら…きっと俺はお前の腕を治していた。
其処に無駄な正論や理屈はない。
ただ
ただ
ただ
愛する人を助けたい一心だろう。