第38章 何度生まれ変わっても
「宇髄さんの言葉は尤もですが、あなたはほの花さんのことを何故思い出せたんですか?」
突然の質問の意図が全く分からない。
俺の言葉を肯定しながらも何故か責められているような気さえした。
「何故って…、ンなの想いが強かったからだろ?兎に角、違和感が凄かったからよ。」
「どのくらいの想いですか?」
「はぁ?!お前、何言ってんの?頭大丈夫かよ。」
想いの大きさを言葉で表せなんて無理にも程がある。そんなことわからないやつではないはずなのに。
しかし、明らかに俺の言葉でムッとした空気感を出してきた胡蝶に一連の言葉が冗談ではないことを悟る。
「ええ。頭は大丈夫です。でも、それなら何で分からないのかなだと思っただけです。」
「…どういうことだよ。」
「言葉にできない想いだってあるってことです。理屈じゃないんですよ。ただあなたが大事だから。愛しているから死んでほしくなかった。それだけのことです。"鬼殺隊のため"というのはほの花さんにとってみれば後付けに過ぎないでしょう。」
胡蝶はほの花の頬の傷に消毒を塗りながら話を続ける。
「ほの花さんは記憶を消した後、此処で泣いてましたよ。あなたに申し訳ないことをしたって。それでも…迷いはなかったように思います。それほどあなたを愛していたんでしょうね。あなた以外とは結婚しないからこの先誰とも結婚しないと言っていましたよ。」
そう言われて思い出すのは記憶がない時のほの花の頑なな態度だった。
確かにほの花は俺に一度だけ体を許したが、それ以上の関係性だけは絶対にならなかった。
あの三人を大切にしてくれとしきりに言っていて、嫁になることを拒んでいた。
それは元恋人と言う男のことを愛しているからと言っていた。
そして…それは俺のこと。
記憶を消してしまった俺にほの花は贖罪のためにそう言っていたのだろうか。
確かにほの花は約束をしてくれていた。
"俺以外の誰のものにもならない"と。
失った記憶の中の俺と。
確かにほの花は約束していたのだ。