第38章 何度生まれ変わっても
俺は胡蝶から目線を外してほの花を見つめた。苦しそうな呼吸をしているのは変わらない。
正直、あそこで死なせてやった方がこんな苦しまずに済んだのか…?と思った瞬間もあった。
でも、そんなことを思うのはやめた。
「…テメェ、絶対に帰ってこい…。此処で死んだりしたらぶっ殺す…!ド派手にきつーい仕置きが必要みてぇだからなぁ…?」
「宇髄さん…」
「確かに俺が周りから危ぶまれるほどコイツに溺れてるのは間違いねぇよ。だが、俺の中で折り合いをつけていたつもりだった。結果として柱として役に立ちそうにはねぇから引退するし、この一連の出来事に何の意味があったのか俺にはわからねぇ。」
俺の記憶を無くして、恋仲という関係性を取っ払ったとしても結果としては俺はほの花を追い求めちまった。
どれだけほの花が俺を遠ざけようとその関係性に違和感を感じていた。
心がほの花を求めていたからだ。
コイツ以外の女に欲情しない上に、頭の中に真っ先に思い浮かぶ女はほの花しかいなかった。
守るべき対象から外すために忘れ薬を飲ませたのならば全く意味がない。
何度やっても同じことだ。
それほど俺はほの花を愛していたし、今も愛している。
それなのにそんな俺の不屈の愛を軽んじて忘れられると思っていたほの花にも腹が立つ。
忘れるわけねぇだろうが。
その上、頼んでもねぇのに勝手に腕治しやがって、死にそうになるなんざ許しておけねぇ。
腕一本なくともほの花がいればそれで良かった。こんなこと俺も望んでいなかったのに。
「…宇髄さんって意外に理屈っぽい人なんですね。」
「はぁ?!お前、馬鹿にしてんのか?!」
俺は正論を言ったつもりだった。
こんなことをした理由に理解はできなかった。
いくらほの花でも其処は徹底的に今すぐにでも腹を割って話したいほどに。
しかし、寝台の反対側に移動した胡蝶がほの花の額に置かれた手拭いを変えながら俺に話し始める。