第38章 何度生まれ変わっても
「鬼殺隊の…ため?」
「はっきり申し上げます。貴方のほの花さんへの溺愛度は正直、同じ柱として目に余るものがありました。柱一人の戦力がどれほどのものかちゃんと理解していないと感じるほど。」
「…は?」
「それを周りが言ってるだけなら良かった。危惧し始めたのが他でもないほの花さんだったから協力したんです。」
胡蝶の言葉を聞いても尚、ピンとこない俺は彼女の言葉を引き続き待つことしかできなかった。
ほの花を溺愛していたのは周知の事実。
今更のこと過ぎて首を傾げるしかできない。
「…煉獄さんが亡くなって…ほの花さんは私たちが戦っている相手の強さを知って、万が一宇髄さんが自分のせいで命を落とすことがあってはいけない…と自分を守るべき対象から外す決断をされたんです。」
それは考えてもみないことではあったが、ほの花の考えそうなことでもあって複雑な心境だった。
そもそもほの花を守るのは当たり前。
恋人であっても継子であってもそれはどちらであっても同じことだ。
今回の戦いでも然り、上弦の鬼との戦闘は凄まじく、一人では倒せなかった。確かに命の瀬戸際となる戦いであったのは間違いないが、それはほの花とて分かっていたこと。
だから俺と婚姻関係を結ばず、ずっと恋仲という関係性だった。
「鬼殺隊のために戦力を確保するっつーことか。いざという時、自分のことを守らなくても良いようにって…。」
「そうです。」
「もしそれが本当なら……ド派手に馬鹿馬鹿しいな。コイツ…目が覚めたら地獄の果てまで抱き潰す……‼︎」
目の前で目を見開いてキョトンとした顔をする胡蝶は若干口元を引き攣らせた。
品のないことをこんなところで言っている自覚はあるが、それでも止まらなかった。
俺の怒りはそれほどまでに沸騰して、腑が煮え繰り返っている。
何故そんな大事なことを俺自身ではなく、胡蝶に言ったのか。
何故不安に思ってることを打ち明けてくれなかったのか。
何故忘れ薬を飲ませて元に戻してしまおうと考える前に俺は気付いてやれなかったのか。
そんな関係性しか築けなかった自分が情けなくて腹立たしくてたまらない。