第38章 何度生まれ変わっても
ほの花の高熱は次の日も、その次の日も一向に下がる気配はなく、四十度を超える熱が続いていた。
根本的な治療はないにせよ、命を繋ぐために胡蝶が栄養剤と水分を点滴から入れてくれていた。
要するにそれがなければほの花は死ぬのだ。
しかし、良いのか悪いのか呼吸の荒さはあるものの、最初の日のような無意識に蹲る様は無くなってきた。
そんなことも出来ないほど体力が落ちたのか?
それとも好転しているのか?
それすら分からない。
胡蝶ですら手をこまねいている。
ほの花の治癒能力の反動は正直、神楽家の女児しか分からない。
ほの花しか分からないのだ。
いや、ほの花ですら分からないかもしれない。それほど希少な能力。
本人も意識はないが、今何故自分が生きているのか分かっていないだろう。
死を覚悟して俺の腕を治したのは間違いないのだから。
目も覚さない。
高熱も続いている。
それでも続けていることは苦しそうに顔を歪めるほの花の背中を撫でること。
これは完全に俺の希望的観測かもしれないが、背中を撫でてやる時だけ少しだけ呼吸が落ち着く気がするのだ。
少しでも改善する気配があることならば何でもやってやりたかった。
俺が諦めたら何もかも終わりだからだ。
──ガラッ
「ああ、やっぱり此処にいましたね。宇髄さん。病室に戻ってください。貴方だって昨日まで熱があったんですよ。」
「うるせぇな。コイツより低いわ。つーことは熱じゃねぇ。」
「熱です。ほの花さんが高熱すぎるんです。」
確かに俺も怪我による熱が二日続いていたが、それでもほの花の病室に通うことをやめなかった。移動されたくないなら部屋を同室にしろと言っても聞き入れてもらえなかったから、仕方なく毎日此処にくるしかないのだ。
「貴方も重傷なんです。出血が多かったみたいですし、暫くは安静にしててください。」
「わぁーったわぁーった。此処で安静にしとくわ。」
「何も分かってないじゃないですか。」
ハァ…とため息を吐く胡蝶だけど、ほの花と会えない時間もほの花のことを考えて休むに休めないのだ。
ほの花のそばにいた方が遥かに休めると言うのになかなか理解してもらえないのが困りもんだ。