第38章 何度生まれ変わっても
──蝶屋敷
バタバタと慌ただしい蝶屋敷に到着すると、胡蝶が俺の顔を見て近寄ってきた。
「宇髄さん!報告は受けてましたが、無事でよかったです。いま、応急処置をさせますのであちらでお待ちください。」
「胡蝶、それよりほの花は?来てるだろ?」
俺も俺で確かに左目を失ってるし、体がデカくなきゃ失血死していたほど出血もあったから重傷の部類ではある。
ただ俺より竈門炭治郎達も怪我をしているのだからそっちを優先で構わないが、ほの花のことが気になって仕方ない俺は開口一番、それを聞いた。
しかし、急に顔を曇らせた胡蝶が目線を逸らしたことで、俺は止まっていた震えに再び襲われた。
「…何か、あったのか。」
「宇髄さんが蘇生してくれたんですよね?心臓は…ちゃんと動いてます。あの後、アドレナリンを投与したので。ですが…」
心臓が動いていると言う事実にホッとしたのは俺だけだろう。
胡蝶は医療に長けている。今の状況が芳しくなくて、心臓が動いていることは大したことでもないのかもしれない。
「…発熱が始まってしまっているんです。」
しかし、その意味が俺にはよく分からなかった。
発熱くらい誰でもよくあること。
ほの花もたまに疲れとか風邪とかで出していたこともあるので、「何だ、熱か」程度の考えだった。
そして俺はほの花のことを本当にすこしも分かっていなかったことを知らされることになった。
「…宇髄さん、こちらへ。」
正宗に肩を借りていた俺だけを手招きをして呼び寄せるので、肩を借りた礼を伝えると今度は胡蝶の肩を借りて屋敷の中に連れて行かれる。
人気のいない場所まで連れて来られると胡蝶は眉間に皺を寄せたまま話し始めた。
「…心臓は動いてます。辛うじて。だけど…体に溜まった負債をほの花さん自身が耐えられるかどうかは正直わかりません。」
「…は?どういう、ことだよ。それ。」
確かに反動は来るのは知っていた。だから先ほど蘇生をしたことでもうそれで相殺されたと思っていた。だから胡蝶の言ってる意味が分からず首を傾げる。
それと同時に嫌な冷や汗が額から流れ落ちていった。