第38章 何度生まれ変わっても
俺はほの花が教えてくれたことを端的に伝えることにした。
ほの花は陰陽師の一族の生き残りで神楽家の女児にだけ受け継がれる不思議な能力があること。
一つは治癒能力。
それと相反する能力で鬼にとって致死性のある稀血でもあること。
そして、治癒能力は使ったら使った分だけ反動で自分に返ってくること。
俺が知っていること、いや、思い出したことをボーッと一点を見つめながら話した。
すると、伊黒が一つ息を吐き、言葉を選び始めた。
「…状況的に…、治癒能力の使いすぎか。」
流石、柱だ。
察しはいい。
俺は項垂れながらも小さく頷いた。
「俺はついさっきまで左腕を切断されるもっと重傷だった。…だが、まさかそんなことしてるとは思わずにやめさせようと気づいた時には既に遅くて…アイツの心臓は止まっちまった。」
「…そういうことか。左腕がくっついたんなら戦線復帰はすぐ出来るのか?ただでさえ煉獄が抜けた穴はでかい。復帰までどれだけかかる。」
伊黒の言葉は辛辣そうに聞こえるが、鬼殺隊の柱である以上、当然の見解と言える。
俺だって復帰できるのであれば復帰したいのは山々だが……
「…俺はもう引退する。左腕はくっついてはいるが、正直日輪刀を振り回すほどの感覚はまだない。治るかもわからねぇ。左目も失っちまってるし、もう前ほどは戦えねぇ。」
これは完全に俺の予想だが、ほの花は完全に俺の腕を治す前にコト切れちまったんじゃねぇかと思う。
ギリギリまで能力を使ってくれたが、最後まで直しきることはできなかった。
しかし、治しきらなかったからアイツは助かったんじゃねぇかって。
ギリギリの首の皮が一枚繋がった状態でほの花は助かった。
本当に奇跡的だと言える。
完全に治っていたらアイツはこの世には戻って来れなかったかと思えば、それで良かったと思った。
「神楽が回復したらまたその能力で治せないのか。」
「っ…ふざけんな!!そんなこと、絶対に俺が許さねぇ!!!」
俺は伊黒に向かって大きな声で反論をする。
それだけは絶対に駄目だと感覚的に分かっていたから。
ほの花のあの能力はただ治すだけじゃない。
あの反動がどんな効果を生むのか未知すぎて俺は恐怖でしかなかったのだ。