第38章 何度生まれ変わっても
切断された腕がほの花のおかげでくっついたとは言え、出血も多かったわけだし、左目は失っている。
重傷に変わりないのだが、先ほどまで無かった腕がくっついていることで雛鶴達が信じられないと言った顔をしている。
竈門妹の血鬼術によって鬼の毒が消失したことだけでも驚いたと言うのに、今度はほの花を探しに行ってる間に腕が元通りになっていたなんて驚くに決まっている。
俺も感覚を取り戻すまでほの花がまさかそんなことをしているだなんて思いもしなかったのだから。
瓦礫が折り重なっているところを背凭れにして座り込むと伊黒が目の前まで歩み寄ってきた。
「どういう状況だ。神楽は毒でも食らったか。」
伊黒がそう感じるのは当然だ。ほの花は出血もしていなかったし、外傷は見たところ殆どなかったのだから。
どうすべきだろうか。
このまま誤魔化そうにも雛鶴達だけでなく、竈門達も俺の腕が切断されていたことは知っている。
下手に誤魔化せばドツボに嵌るのは目に見えている。しかし、これはほの花の機密事項でもある。勝手に伊黒に話すことは如何なものなのか。
俺は迷ったが、此処まで知られている以上、下手に誤魔化しても事実を捻じ曲げることはできないと感じ、そのまま話すことにした。
「…これから話すことはとりあえず他言無用にしてくれ。」
「…他言無用?」
「ほの花の機密事項だ。アイツはそれを生まれた時からずっと秘密にしてきた。他人に言っては駄目なことだと親に言われてきたことなんだ。たまたま俺は知ったが、アイツの家族以外知らないことだ。頼む。」
近くにいた雛鶴達がそれを聞き、「席を外します」と言って立ち上がった。
雛鶴達は俺の腕が治った理由を知りたいだろうと思ったが、「ほの花さんが治ったら本人から聞きますので」と言い、その場を去っていった。
残されたのは柱二人。
俺と蛇柱の伊黒だけだった。
他に誰もいないことを気配も含めて確認すると俺は伊黒に目を向けてゆっくりと話し始める。