第38章 何度生まれ変わっても
「宇髄ッッ!医療班を連れてきたからとりあえず代われ‼︎神楽を離せ。」
せっかく全てが繋がってほの花のことを思い出したと言うのに、邪魔をされたような感覚になってしまい、俺は咄嗟に伊黒の手を振り払ってしまった。
「ふざけんな‼︎俺から二度とほの花を奪うな‼︎誰にも渡さねぇ!!離せ‼︎」
「落ち着けッッ‼︎今は神楽の命を繋げることが第一だろうが‼︎冷静になれ!そのままだと神楽はいずれ死ぬぞ。腕の中で死なせてやりたいなら止めないがな。」
「……ッ…!!」
ハァ、ハァ、ハァ…と言う荒い呼吸は自分だ。
震えながら腕の中のほの花を見ればか細い呼吸を繰り返すばかり。
"このままではいずれ死ぬ"というのは血が上った頭でも何とか理解できた。
涙を乱雑に拭き取ると目の前まで来ていた医療班にほの花を渡した。
「……頼む。大事な…女なんだ。助けてくれ。」
「は、はい!必ずや…!」
そう言うと、何かの薬剤をほの花に注射をしてそのまま二人がかりで運んで行った。
残されたのは玩具の指輪と散らばったほの花の栗色の髪。
バッサリと短くなっていたのはまさか鬼畜生に切られたのだろうか?
背中ほどまである美しい栗色の髪は俺のお気に入りだった。絹のように滑らかで顔を埋めれば石鹸のいい匂いがして、ほの花を感じられたから。
散らばっている髪を一房取るとそれを握りしめて目を閉じた。
「…まぁ、上弦の陸を倒したのは褒めてやるが、一番下だ。陸だからな。神楽も無事だったんなら良かったじゃないか。」
「…別に、お前に褒められてもな…」
確かにほの花が助かるのならばこんな嬉しいことはない。ホッと脱力するとその場に座り込む俺の周りに元嫁達が近寄ってきた。
しかし、先ほどまで大号泣しながらほの花に一人で話しかけていたことが今更ながら恥ずかしくなり、近くに落ちていた玩具の指輪を拾うことで目線を外した。