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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第38章 何度生まれ変わっても






──トクン


「……?!」


それは突然のこと。既に蘇生を試みてから一時間に迫ろうとしていて、その"意味"を理解せざるを得ない境地に達していた。

だからいくら耳の良い自分でも空耳だと思ったほど。


しかし、ほの花の瞼がピクっと動いたことで俺は目を見開き、急ぎ胸に耳を当てた。


すると、確かに弱々しくではあるが"トクントクン"と心臓が拍動し始めたのが分かる。
明らかにそれは奇跡的な現象。


次いでほの花の口が少しだけ開き、スゥッと酸素を取り込んだ時、俺は彼女の顔を包み込んで声をかけた。


「ほの花…‼︎そうだ…‼︎自分で息しろ‼︎ゆっくりで良いから、自分で呼吸しろ‼︎医療班‼︎誰か医療班呼んでくれ‼︎」


体を揺すればコロンと紐が切れて首から落ちて地面に転がった物があった。
一瞬で視線を奪われたそれは玩具の指輪だった。


切れた紐ごと落ちてしまっているけど、傷ひとつなく綺麗な状態のそれを見ればほの花がそんな玩具を自分の記憶がない時もずっと大切にしてくれていたことがわかり、涙が溢れてきた。


俺の呼びかけに伊黒が慌てて医療班を呼んでくれているが、その声をかき消すようにほの花に話しかける。



「…本物買ってやるって約束したろうが…!受け取らずに死ぬなんて絶対に許さねぇからな‼︎生きろ…‼︎ほの花…‼︎」


弱々しい心臓の拍動も呼吸も正直いつ止まってもおかしくないほど。
でも、さっきよりも少しだけ真っ白な顔に薄紅色の血色が加わってきたような気がして必死に声をかけた。



「桜も見にいくんだろ…?!連れていってやる‼︎俺は生きてるだろ?!何が"恋人は死んだ"だよ。勝手に殺すんじゃねぇよ‼︎だからお前も勝手に死ぬことは絶対に許さねぇ!」



ほの花が仕切りに"死んだ恋人のことを忘れられない"と言っていたことを思い出せば、それが誰なのかやっと分かった。


俺との関係性を元に戻すためにお前は記憶の中の俺を殺して俺がこれ以上お前に近づいて来ないようにしたんだろ。


俺は死んでねぇ。
何度だって思い出してやる。生き返ってやる。


お前を思い出すためなら何度だって。


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