第38章 何度生まれ変わっても
上弦の鬼と戦闘をしているという噂を聞きつけて蛇柱である伊黒が応援に駆けつけてきた。
もっとも既に戦闘は終えていたが。
しかし、着いた瞬間に目に飛び込んできたのは傷だらけの柱仲間である宇髄が必死にほの花を蘇生させようとしているところだった。
それを見てそばでおいおいと泣いているのは三人の元嫁たちだ。
ほの花が忘れ薬を使って、宇髄に自分と恋仲だった時のことを忘れさせたと言うのは不死川から聞いて知っていた。
だが…今の鬼気迫る様子で蘇生をする宇髄を見ればその忘れ薬の効力たるや…?と疑問に浮かぶほど。
いや、ほの花が死にそうな衝撃で思い出したのかもしれない。
「…どれくらい続けている?」
近くにいた宇髄の元嫁である雛鶴が涙声で「既に半刻を優に過ぎました…」と答えた。
それを聞いて愕然とした。
半刻を優に過ぎたということは一刻に迫ろうとしていると言うこと。
心臓が止まって半刻以上経てば蘇生の見込みは限りなくゼロに近付く。
そんなことは宇髄とて分かっているだろうに。
伊黒はゆっくりと宇髄のところまで歩いていくと、隣に座り手を止めた。
「…宇髄、残念だが…」
「うるせぇ!!離せ!!」
しかし、伊黒の制止を振り切っても尚、続けようとする宇髄が痛々しくて流石に居た堪れない。
それでも伝えないといけない。
伊黒はもう一度宇髄の手を抑えると強く言葉を発した。
「宇髄!!もう諦めろ。手遅れだ…。」
「ふざけんなよ!?此処にいる人間が全員そう言っても俺は諦めねぇ!俺だけは絶対ェに諦めねぇ‼︎俺の女を勝手に殺すんじゃねぇ‼︎」
「宇髄‼︎もう半刻を優に過ぎている。やめろ。神楽をもう、眠らせてやれ…」
宇髄とて時間のことは頭にあった。
確かに心臓が止まってから時間が経てば経つほど蘇生は難しくなる。
「お前に…何がわかるんだよ。眠らせる?は?ああ、そうか、コイツ寝てんのか。わぁーった。わぁーった。」
認めたくないあまりに軽口を叩いてみるが、ガンッと思い切り地面を叩きつけたその手の痛さがこれが夢ではないと思い知らせてくる。