第38章 何度生まれ変わっても
俺の腕がくっついているのはほの花が治癒能力を使ったからで間違いない。
確かに失血死してもおかしくないほどの大怪我だったが、自分の体は頑丈だし、腕の一本くらいなくとも生きていけると思っていた。
ほの花だってそれくらい分かっていたはずだ。
何が"あなたは陽だまりだった"だよ。
この手で愛したのは間違いないが、そんなことくらいで自分の命を削るなんて許さない。
使い方間違ってるだろうが‼︎
毒も消えていたのだから……。
いや、ほの花は竈門妹が来ていたことを知らなかったかもしれない。
だとしたらこの一連の流れも理解できる……理解できるが……
「意味、ねぇだろうが…!!お前がいなきゃよぉ…!腕の一本くらいなくたってお前を愛してやれるのに…!」
俺は必死にほの花の止まった心臓が動くようにと刺激を続けた。
体を動かせば、流血しすぎたせいで頭がふらつくし、左目は見えないままだから視界も靄つく。
それでもほの花の心臓を押し続けた。
すると、散り散りになっていた嫁たちが戻ってきていて、俺の様子に慌てて集まってきた。
「天元様…?安静にしていないと…!っ、ほの花さん?!」
「え、天元様、腕…!え…?!」
「やだやだやだ…!ほの花さん、どうしたんですかぁ?!」
それぞれに答えている余裕もない俺は目でチラッと三人を見るだけでほの花に声をかけ続ける。
自分の耳にはまだほの花の心臓の音は聴こえてこない。
耳が良いっつーのも考えものだ。
直ぐに結果がわかってしまう。
この心臓の拍動を再開させるための行動が無駄だと言われているかのように。
うんともすんとも言わないほの花の心臓。
「…っ、お前…!クソ真面目のくせに…!心臓は随分怠け者じゃねぇかよ…‼︎絶対に許さねぇぞ…‼︎お前に文句の一つや二つ言わねぇと気がすまねぇからな…!!」
そうだ、許さない。
ちゃんと甘えさせてやれなかった自分も悪かったと思う。
だが、やっとやり直しができると思ったのにこんな仕打ちあるか?
鬼を倒しても、腕が治っても
ほの花がいないならば何の意味もねぇのに…