第38章 何度生まれ変わっても
ドンッと梅が飛びついた衝撃で少しだけ妓夫太郎はよろけるが、梅はそのまま離れない。
「お、おい!」
「嫌だ!嫌だ!絶対に離れない‼︎ずっと一緒にいるんだから‼︎何回生まれ変わってもアタシはお兄ちゃんの妹になる‼︎」
ボロボロと涙をこぼしながらそれは妓夫太郎の髪に落ちていく。
何があっても離れないと言う強い意志がその腕から、体に回した足から伝わってくる。
「アタシを嫌わないで!叱らないで!一人にしないでよぉ!置いてったら許さないわよ!ずっと一緒にいるんだもん!忘れちゃったの?!ひどい!ひどいよ!」
"忘れちゃったの?"と泣き叫ぶ梅に妓夫太郎はハッとした。
幼き日の二人は雪の降る外で二人で肩を寄せ合っていた。
寒くて腹ペコだった。
でも、二人だから乗り越えられた。
『俺たちは二人なら最強だ。約束だ。ずっと一緒にいる。絶対に離れない。ほら、もう怖くないだろ?』
妓夫太郎が泣いてる梅に言った言葉。
忘れるわけがない。
忘れるはずがなかった。
二人ならば乗り越えられる。
二人だから乗り越えられた。
いくつもの過ちを繰り返したかもしれない。
それでも二人の絆は強固なものだった。
ああやって生きるしかできなかったけど、何度生まれ変わっても兄妹に生まれ変わりたい。
そう思えるほど二人の絆は強かった。
環境さえ違えば別の未来があったことだろう。
失った命は元には戻らない。
それでも、自分達は二人で生きていく。
どこにいっても。
梅を背中におぶった妓夫太郎の後ろ姿は業火の中に消えていく。
それが何処だとしても、二人ならば乗り越えられるから。
***
──ドクンドクンドクン
これはほの花の心臓の音じゃない。
自分のだ。
倒れ込んできたほの花を何とか引き寄せて受け止めると震える手で仰向けに寝かせたが、口元に翳した手に呼吸がないことを無情にも知らせてきた。
自分の腕には先ほどまではなかった腕がくっついている。指先まで何とか動くが少しぎこちない。
それでもほの花の胸に手を重ねると震えが止まらない手で心臓を押し始める。
「…っ、ほの花…!!頼む…!!何してんだよ…!!息しろって…!!」
何故こうなった?
何でだ?
俺は頭の中で考えを必死に巡らせた。