第38章 何度生まれ変わっても
お互いを罵り合う二人はついには売り言葉に買い言葉を言い合うようになる。
「アンタなんかきっと血も繋がってないわ‼︎似てないもの!この役立たず!強いことしかいいところがないのに負けたら何の意味もないわ!出来損ないの醜い奴よ!」
「出来損ないはお前だろうが!お前さえいなけりゃ俺の人生もっと違ってた!何で俺ばかりお前の尻拭いをしなけりゃならねぇ!お前さえ生まれてこなきゃ…!」
"お前さえ生まれてこなきゃよかった"と言いかけた妓夫太郎に炭治郎はそっと口を覆った。
「嘘だよ、本当はそんなこと思ってないよ。全部嘘だよ…」
妓夫太郎と堕姫も人間の時はさぞかしつらい思いをたくさんしてきたことだろう。
それは不憫だと思っても、やってきたことは許されない。
殺してきたたくさんの人に恨まれて憎まれて罵倒されるだろう。
でも、二人だけは罵り合ってほしくなかった。
味方をしてくれる人が居なくても二人で一つならば最期まで二人で同じ方向を見て欲しかった。
「アタシはあの女じゃない!生まれてこなきゃ良かったなんて言わないでよぉ!!あの女だけよ!生まれてきたらいけない女は!!うわあああん!説教すんな!糞餓鬼!あっちいけ!」
(…あの女…?)
炭治郎は堕姫の言う"あの女"と言うのが誰のことなのか一瞬考えたが、直ぐにほの花だと気付いた。
此処に残る微かな残り香にほの花のものがあったからだ。
「…ほの花のことを悪く言うな。生まれてきたらいけない人間なんていない。」
「いるわよ!!あの女がいる限り害悪なの!馬鹿じゃないの?あの女のせいで総攻撃を受けて殺されるかもしれないのに!あんな女!生まれてこなきゃ良かったの!」
ほの花の稀血と言うのはそれほどまでに害悪なのだろうか。
理解しきれない炭治郎はただただ負け惜しみのようにそう言う堕姫に眉間に皺を寄せる。
「悔しいよぉ、悔しいよぉお!死にたくないよぉ!お兄っ…」
「梅っ…!」
最期の最期まで恨み節を言っていた二人だった。
でも、最期に思い出したのは人間だった時の記憶だった。