第38章 何度生まれ変わっても
ほの花が妓夫太郎と堕姫の元を去った後、そこに近づいていたのは炭治郎と禰󠄀豆子。
「禰󠄀豆子アッチだ!鬼の血の匂いがする‼︎」
鼻の効く炭治郎はくんくんと匂いを嗅ぎ、禰󠄀豆子に場所を伝える。
途中、見つけた血溜まりで珠世さんへ上弦の鬼の血を送ったが、まだ本体の頚の発見には至ってない。
禰󠄀豆子が連れて行ってくれる方向に進めば進むほど鬼の匂いは強くなっていき、それと同時に声が聞こえてきた。
話し声だと思っていたそれは近づけば近づくほどに怒鳴り声だと気づく。
禰󠄀豆子が立ち止まった先に見えたのは妓夫太郎と堕姫が頚だけになっても尚、言い争いをする姿だった。
「何で助けてくれなかったのよ!!」
「俺は柱を相手にしてたんだぞ?!」
「だから何よ‼︎なんでトドメを刺しておかなかったのよ!頭かち割っておけば良かったじゃ無い!」
「行こうとしてた!!」
言い争っているが、その姿は仲間割れと言うより…兄妹喧嘩。
兄妹だからこそ言える腹の中に積もりに積もった不満が頚を斬られたことで噴出したのだろう。
「耳に飾りをつけた餓鬼が生きてたから先に始末しようと思ったんだ!そもそもお前は何もしてなかったんだから柱にトドメくらい刺しておけよ!」
「じゃあそういう風に操作すればよかったじゃ無い!それなのに何もせずに油断した!」
言い争う兄妹を同じく兄妹で見つめる炭治郎と禰󠄀豆子。
やったことは許されないが、この兄妹喧嘩はあまりに悲しい。
(…肉体は徐々に崩れて行っているな…)
やはり鬼なのは間違いない。
崩壊していくその様は鬼の証でもあった。
「うるせぇな!仮にも上弦だって名乗ってんなら手負いの下っ端二人くらい自分で倒せ!馬鹿!」
「……アンタみたいに醜い奴がアタシの兄妹なわけないわ‼︎」
罵り合いは止まらない。
それどころか悪化する一方。
二人で一つと言っていた息ピッタリな上弦の陸の姿は其処にはない。
でも…
其処にいたのは鬼とか人間とか関係ないただの兄妹の姿だった。