第37章 貴方は陽だまり
炭治郎達が堕姫と妓夫太郎のところに到着する前、たまたまそこを通りかかった人物がいた。
ほの花だ。
突然の爆風で驚いたが、身を隠して難を逃れた。ひょっとして宇髄達に何かあったのかもと思い、急ぎ其処に向かっていた時、頚だけで言い合いをする二人の姿を見かけて、誰かが頚を斬ったことを知った。
ほっと一息吐くが、素通りすることもできずに少しの間見下ろしていると堕姫がほの花の存在に気づく。
「何見てんのよ‼︎アンタ…!アタシ達のことを笑いに来たの?!ふざけんじゃないわよ‼︎あっち行って‼︎」
そう思うの無理はない。
自分達は頚を斬られた敗者。勝者側の人間がその姿を見下ろしていればそう思うだろう。
しかし、ほの花が言葉を発する前に喋ったのは妓夫太郎。
憎しみを込めた目でほの花を見ると怪しく笑った。
「お前だけはなぁあ、勝ったと思うんじゃねぇぞ?俺たちがお前を見つけたということは…、彼の方が全力でお前を探すだろうな。匿った者全員皆殺しだ。俺たちよりももっと強い上弦がいるんだ、全員殺される‼︎お前を守る者全員だ‼︎」
ハハハハハ!と高らかに笑う妓夫太郎にほの花は息をのんだ。
「…こっちだって強い人がたくさんいるの。貴方達の思うようにはならないわ。」
「いーや、なるねぇ。お前は生きてるだけで害悪だ。俺たち鬼にとっても。味方にとってもなぁ。匿えば匿っただけの人数が皆殺しになる。全員の屍の前で生まれてこなければよかったと悔やめばいい!!」
ほの花の脳裏に浮かぶのは里のみんなの亡骸。
里中に散らばっていて、手足が切断された者も多かった。
妓夫太郎のあの円斬旋回によるものだろうか?
堕姫の帯によるものだろうか?
最近は思い出すこともなかったのに、いざ思い出せば再び吐き気を催すほどの衝撃。
ほの花の額に汗が浮かぶ。
「…既に頚を斬られている貴方達をどうこうする気はないわ。せいぜい最期の時を兄妹仲良く過ごして。」
その言葉に妓夫太郎と堕姫は怒り狂い、罵声を浴びせてきたがその声はほの花には届かなかった。