第37章 貴方は陽だまり
宇髄が最期の言葉を言い残そうとしていたところにまきをと須磨のいつもの口喧嘩がはじまり、収拾がつかなくなった其れに愕然としていた。
(嘘だろ…何も言い残さずに死ぬのか俺…毒で舌も回らなくなってきたんだが。どうしてくれんだ…言い残す余裕あったのによ、マジかよ)
ギャーギャーと騒がしい嫁たちに風前の灯の宇髄だったが、其処に「よっ!」と現れたのは竈門禰󠄀豆子だった。
突然ひょこっと現れたその少女に口喧嘩は一旦収まり、皆禰󠄀豆子に釘付けになる。
しかし、誰も彼女に話しかける間もなく、ペタッと宇髄に触れた禰󠄀豆子は先ほどの炎で宇髄を焼いた。
ボッと燃え上がる炎にもちろん三人は大慌て。
今の今まで生きていたのにとどめを刺すことはないだろうと気がきではない。
「ぎゃああああ!何するんですか?誰ですかあなた!いくらなんでも早いです!まだ死んでもいないのに焼くなんて!お尻を叩きます!お姉さんは怒りました!」
須磨が禰󠄀豆子に向かって切諌しようとしたとき、「ちょっと待て」と止めたのは焼き殺されたかと思われた宇髄だった。
「こりゃあ一体どういうことだ?毒が…消えた…?」
その言葉に喜びを隠せない三人は勢いよく宇髄に抱きついた。
殺されると思われたが、思いの外助けてもらったのだと分かると若干居た堪れなさも残る。
「禰󠄀豆子の血鬼術が毒を燃やして飛ばしたのだと思います。俺にもよくわからないのですが…傷は治らないので動かないでください。御無事でよかったです…」
「こんなこと…あり得るのかよ…混乱するぜ…いやいや、お前も動くなよ。死ぬぞ」
「俺は鬼の頚を探します。確認するまでは安心できない。」
宇髄は炭治郎のその言葉に頷いたが、気になっていたことも同時に聞いてみた。
「…ほの花を…見てねぇか…?」
「……見て、ないんです…。僕も探してたんです…伊之助の傷を診てほしくて…」
その言葉に宇髄は下を向いた。
まさか…自分達だけが生き残ったのか?
ほの花は…何処にいる?
頭に浮かぶのは最悪な末路。
必死に頭を振って振り切ろうにも自分も出血が多すぎて頭がふらついた。