第37章 貴方は陽だまり
「腹減った‼︎なんか食わせろ‼︎」
全ての毒が消え去ると其処にいたのはいつもの伊之助。
あまりに嬉しくなって炭治郎は伊之助にそのまま抱きついてしまったが、毒を喰らったのは伊之助だけではない。
何ならかなり初期の段階から毒を喰らっていた人物を忘れるわけがない。誰よりも最初に妓夫太郎と対峙していた人物。
宇髄だ。
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「いやぁあああ!死なないででええ!死なないでください、天元様ぁああ!!」
須磨の声が響き渡る。
其処には宇髄を囲むようにして三人の嫁たちが途方に暮れていた。
「鬼の毒なんてどうすればいいんですかぁぁぁ!ほの花さーーーーーん!!どこおおおおお!!早く来てくださいぃぃい!!」
此処でもまたほの花を探していた。
鬼の毒を治せる薬を作れるのはほの花しかいないと須磨とまきをはしきりに立ち上がったり、座ったりを繰り返している。
「せっかく!生き残ったのに…!せっかく勝ったのにぃい!ほの花さぁああん!!鬼の毒なんてどうしたらいいのぉ!解毒薬が効かないよぉ!!」
宇髄もまたほの花の姿がないことで目を彷徨わせていた。
(…アイツ…、爆風に巻き込まれて…ねぇよな…?アイツの音が聴こえねぇ…)
ほの花を探そうにももう体は動きそうにもない。
まさかほの花は死んでしまったのか?
そこまで考えると宇髄はそれならそれで自分ももうすぐ逝くのだから良いか…なんて思い始めていた。
とりあえず目の前にいる三人に思い残すことだけ伝えようと口を開く。
「最期に言い残すことがある…俺は…今までの人生…」
「天元様を死なせたらアタシもう神様に手を合わせません‼︎絶対に許さないですからぁぁぁ!」
「ちょっと黙んなさいよ‼︎天元様が喋ってるでしょうが‼︎」
こんな時なのにも関わらずまきをと須磨はいつも通り口喧嘩をし始めてしまった。
雛鶴が見かねて「どっちも静かにしてよ…」と仲裁に入るが、二人の争いは過熱するばかり。
「口に石詰めてやる‼︎この馬鹿女‼︎」
「うわあああん!まきをさんがいじめるぅう!!」
気力もない宇髄はそれをただ眺めていることしかできずに茫然としてしまった。