第8章 愛し君と…(※)
「ほの花さんだって天元様に愛されたい!って思いませんか?」
「え、えと…でも、今もすごく大切にして、下さってるかと…。」
「そうじゃなくて!身も心も一つになりたいと思いません?」
「そ、それは…。」
なりたくないと言ったら嘘になる。でも、具体的にどう言う行為なのかまで分からないことが少し怖いというのもある。
煮え切らない私の態度に痺れを切らしたまきをさんが湯槽の外に出るとわたしにも出るように促した。
そろそろのぼせそうだったので言われた通りに出ると先程洗ったばかりだと言うのにもう一同私の体を洗い始める。
「え、ま、まきをさん?」
「今日、"初めて"を天元様に捧げるかもしれないんだから念入りに洗っておきますね!」
「んなっ!?いや、そんな!そうならないかもしれないし…!」
「ほの花さんだけじゃなくて天元様だって好いてる人を欲しいと思うのは当たり前のことです!最初は怖いかもしれないですが、大丈夫!天元様に身も心も委ねちゃって来てくださいね!」
「ふぇ、えええ…?!」
反論すら許されずにわたしはひたすらまきをさんに頭の先から足の爪の先までツルツルに磨かれると、やっとお風呂から出ることを許された。
部屋に戻る直前にまで「香油は胸元に多めに塗るんですよ〜!」と言われて、万が一宇髄さんがそういう気がなかった時のことを考えると既に恥ずかしくてたまらない。
自分だけが意識しているのではないかということが否が応でもよぎってしまう。
もしそうなったらこんなにピカピカに磨いてもらって尚且つ香油の塗り方までいつもと変えて、もの凄く自分だけそういう気になってるように思えてならない。
しかし、せっかくまきをさんが綺麗にしてくれたのだからということを言い訳にして、せっせと香油を塗りたくる私はやはり少しだけ期待してるのだろうか。
宇髄さんに愛してもらいたいなんてことを。