第37章 貴方は陽だまり

「動ける‼︎だけど宇髄さんは毒にやられているから危険な状態だ‼︎一刻も早く決着をつけなければ…‼︎」


炭治郎が今度は堕姫と向き合おうとしている時、下から血の刃が襲ってきた。
それをなんとかギリギリで受け流すが、宇髄を相手にしながら炭治郎の動きまで読んでいるのは最早天晴れとしか言いようがない。



「アハハハ‼︎段々動きが鈍くなってきているわね‼︎誰が最初に潰れるかしら‼︎」



伊之助は悔しさで震えていた。
怪我をしていないのは自分と善逸のみ。
それなのに堕姫に近づけさえしない有様に悔しくてたまらなかった。



(…何のために修行してきたんだ！何のために…‼︎)



脳裏に浮かぶのは炎柱の最期の姿。
守られてばかりで悔しかったあの日。
伊之助だって今度はそうなりたくないと思って鍛錬を積んできたのだ。



「この鬼の頚は柔らかすぎて斬れない‼︎相当な速度かもしくは複数の方向から斬らなくちゃ駄目だ‼︎」


炭治郎の言葉に帯がほんの少し緩んだ気がした。
伊之助はそれを信じて突き進むことにした。
やれることは何でもやる。やってみなければ分からないとだから。


「複数の方向なら二刀流の俺に任せておけ、コラァ！三人なら勝てるゼェエエッ‼︎」


「分かった‼︎善逸！伊之助を守ろう！」


「よし‼︎」



それは伊之助に全ての大部分の攻撃を委ねて、援護に回るということ。
三人ならばお互いの弱点を補えることができる。
そう考えての攻撃だ。



──獣の呼吸　捌ノ型　爆裂猛進‼︎



伊之助が技を繰り出したのとほぼ同時に炭治郎も善逸も刀に手をかけた。


──水の呼吸　参ノ型　流流舞い


──雷の呼吸　壱ノ型　霹靂一閃・八連



猪突猛進の如く、伊之助は堕姫に一直線に突き進む。それを助けるように伊之助に襲いくる帯を炭治郎と善逸が斬っていく。


(コイツ…‼︎防御を一切せず直進のみに集中してる…‼︎)


それは炭治郎と善逸を信頼しているからこそできること。二人がいてくれる安心感は計り知れなああ。

伊之助は堕姫のところまで向かうと二刀流の刀を左右の頚に挟み込み斬り上げにかかった。


(斬れるわけない！こんなガタガタの刃で‼︎)



しかし、伊之助は諦めない。
猪というのは死ぬまで猪突猛進なのだ。