第37章 貴方は陽だまり
ほの花と雛鶴が居なくなったとは言え、妓夫太郎との戦いは苦戦を強いられていると言っていい。
挟み討ちにして首を狙ったと言うのにそのどちらの刃も受け止められている。
妓夫太郎は妓夫太郎で、腑が煮え繰り返る想いもしていたのだ。
「お前らが俺の頚斬るなんて無理な話なんだよなぁ。あの女も逃がしちまってよぉ。絶対に許さないからなぁあ?」
そう言うと自らの頚に炭治郎達の刃を食い込ませて拘束して、更に後ろから狙っていた宇髄のもう一本の日輪刀を頚を回して口で受けとめる。
──ガキィィン
(頚を後ろにぶん回すんじゃねぇえ!バカタレェエエ!)
口で刃を受け止めたかと思うとすぐさま体から何かを出そうとしている妓夫太郎に宇髄が気付く。
またあの血の刃を体から出す気なのだ。
宇髄は舌打ちをすると炭治郎に向かって声をかけた。
「竈門、踏ん張れ!!」
此処でアレを出されたらまだ近くにいるだろうほの花達にも届いてしまうかもしれない。
宇髄は少しでも場所を変えるため屋根瓦を蹴り、その軌道を変えた。
(…もう二度とアイツに指一本触れさせねぇと約束した…!)
宇髄は一人、屋根から降りて妓夫太郎と戦う決意をした。
「危ねぇぞぉおおお!!ダアアアア!」
時を同じくして、堕姫と戦闘中だった伊之助と善逸が防戦一方で帯と共に雪崩れ込むようにやってきた。
咄嗟に炭治郎は避けるが、その状況に目を見開く。
「作戦変更を余儀なくされてるぜ!蚯蚓女に全ッ然近づけねぇ!コッチ三人であの蟷螂鬼はオッサンに頑張ってもらうしかねぇ!」
「鎌の男よりまだこちらの方が弱い‼︎まずこっちの頚を斬ろう!炭治郎動けるか!」
善逸は寝ているのか寝ていないのか不明だが、はっきりと言葉を話す姿に彼はやはり寝ている時が最強だという説は正しいのかもしれない。
炭治郎は下で妓夫太郎と戦っている宇髄を確認しながらも状況判断を迫られた。
どちらにしてもどちらかの頚を早く斬って加勢した方がいいのは間違いない。今近いのが堕姫ならば先に頚を斬った方がいいだろう。
炭治郎は善逸と伊之助の言葉に大きく頷いた。