第37章 貴方は陽だまり
ほの花と雛鶴が落ち合った頃──
宇髄と炭治郎。
善逸と伊之助。
それぞれの戦いが建物の中と屋根の上で死線を繰り広げていた。
帯と血鎌の刃が飛び交うそこは全員がそれを受け止めることで精一杯だ。
しかし、受け止めきれないそれを避ければ当然ながら建物のにダメージが蓄積されていく。
堕姫と妓夫太郎の攻撃によって瓦礫が舞ったその空間が傾き始めたことで宇髄は倒壊の恐れを危惧した。
毒を喰らってはいるが、まだ冷静に物事を見れている。
(瓦礫で見えねぇ…!)
──ドドドド
嫌な音を立てながら崩れていく様を見ながら、瓦礫を捌いていたらそこに飛び込んできたのは妓夫太郎。
宇髄は迫りくる鎌を日輪刀で受け止めればその鎌の重さと速さに冷や汗が流れ落ちる。
(…速い。本当に蟷螂みたいな奴だ。何だ、この太刀筋は…!)
何とかその攻撃を受け止める宇髄だったが背後から血の刃が迫ってきた時には既に逃げ場がない時だった。
これまでか…と一瞬思いかけた時、背後でそれを受け止めた存在に目を見開く。
「ぐっ…!」
そう、炭治郎だ。
此処にいるのは宇髄だけではない。先程は庇われてしまったが、果敢にもその刃を受け止めるために飛び込んだのだ。
あまりの攻撃の重さに刀を持つ手が震えた。
それを受け流さなければ刀が折れてしまうだろう。
何故ならば力と力の押し合いであれば絶対に弱い方が負けるのだ。
力の流れを見誤らずに正しく受け流すことができればこの攻撃を食らわずに済む。
(防御力なら水の呼吸が上なんだ。受け流すだけなら刃毀れなんてしなかったはず)
炭治郎がヒュウ…と息を吸いその攻撃を力に任せたまま上に受け流せば、その背後では宇髄が攻撃を仕掛けていた。
──音の呼吸 鳴弦奏々
しかし、攻撃を受けたところで妓夫太郎は大したことではない。宇髄のその攻撃ですら少し余裕がある始末。
(騒がしい技で押してきたところで意味ねぇんだよなぁ!)
それは勝利への絶対的自信。
相手は手負い。
そのうち動けなくなるという未来が簡単に予想ができる。
そして、自分の攻撃だけでなく、堕姫の帯も尚此処に滞留して宇髄にまとわりついているのだ。