第37章 貴方は陽だまり
「…もちろんです。私も…雛鶴さん達ともっと仲良くなりたいです。」
「…遠慮されるのは悲しいです。私たちのことを姉妹だと思って、甘えてくれていいんですからね。」
腹を割って話せば済む話だったのかもしれない。
ほの花は恥ずかしそうに言葉を選んでいる雛鶴を見てそう感じた。
自分が三人の絆を壊してしまったのではないかと思っていた。
でも、違う。
どう頑張ったって彼女達の絆は無くならない。
人の想いは無くならないのだ。
宇髄と三人の嫁達との間にはほの花には分からない絆がある。
それは家族のような固い絆で結ばれている。
そんな四人が腹を割って話して夫婦関係を解消すると決めたならば其処に蟠りがあるわけがないのだ。
関係を解消したとしても絆は残る。
絆は永遠に無くならない。
そして、関係を解消してまでほの花のことを愛していた宇髄のこともまた見縊っていたのかもしれない。
生半可な気持ちで関係など解消しやしない。
宇髄にとってほの花は初めて自分で選んだ女だった。
自らの選択をすることができなかった忍時代。
その傍らにいた三人の嫁達すら親に決められた存在。
そんな中で出会ったのがほの花。
生まれて初めて心の底からほしいと願った女だった。
人にはそれぞれ絆がある。
ほの花にもまた元護衛に対して幼い頃から共に育った絆があるように宇髄にも嫁達との絆がある。
そこにはそれぞれの想いがあり、愛があり、信頼がある。
「…嬉しいです。ありがとうございます。…さぁ!行きましょう!鬼の足止めをするために!」
「…ええ!行きましょう!」
再び歩き出した二人はどちらかともなく自然に手を繋いだ。
ほの花が誘導しているのではない。
二人で同じ方向を見ている。
それこそが新しい絆の始まり