第37章 貴方は陽だまり
ほの花は京極屋の楼主を看取った後、彼を葬い、戦闘の邪魔にならないところで、救護活動を続けていた。
動ける人は歩いてもらい、避難してから隆元、大進に手当てを頼んであるので、ほの花がやるべき救護は重傷の人の怪我の処置。
遠くの方で地響きのような音がきこえてくる。
それだけでその戦闘の凄まじさを物語っている。
(…私なんて邪魔なだけだ…!やっぱり医療班としてできることをした方が何倍も良い。)
ほの花は壁に寄りかかっている人の前に立ち止まると脈の確認をする。
うんともすんとも言わないその人は事切れている。体も既に冷たくなってきているのでもう手遅れだろう。まだまだ怪我人がいる。
申し訳ないがそのまま手を合わせると先に急ぐ。
すると、建物と建物の間から見たことある人たちが出てきたので、慌ててその場に立ち止まる。
「雛鶴さん!正宗!無事だったんですね!?」
ずっと気がかりだった。
地下にいたのはまきを、須磨、隆元、大進のみ。
雛鶴達は一体何処にいるのだろう?と。
しかし、生きているのだろうと言うことだけは何となく思っていた。
そうでなければ、助けに来た宇髄がこの二人を探すように誰かに頼む筈だ。
それなのに宇髄はその事には少しも触れずに真っ直ぐに鬼の元に駆けて行った。
それは遠回しにこの二人が無事だと言うことを意味していたような気がしていたのだ。
「ほの花さん…!」
「ほの花様こそ、ご無事だったんですね?!良かった…!」
正宗の口ぶりからすると、宇髄からほの花が捕まったことを聞かされていたのだろう。
ほの花は大きく頷くと二人の怪我の状態を確認した。
正宗は擦り傷程度。
雛鶴は外傷こそないが、どうやら毒を飲んでいる様子でまだフラついている。
「いま、解毒薬を…!」
「いえ!天元様がいらっしゃった時にほの花さんの解毒薬を頂きました。もうすぐ効いてくる筈です…!」
それを聞き、ほの花は宇髄に解毒薬やら傷薬やら一通り渡しておいて良かったと安堵したが、渡した解毒薬は一般的なものなので、雛鶴の今の状態を確認してもう一つ丸薬を渡した。