第36章 命の順序
宇髄はわざとその場で話し続けた。
炭治郎達に自分が知り得た情報を伝えるためだ。
「テメェらの倒し方はこの俺が看破した‼︎同時に頚を斬ることだ!二人同時にだ!そうだろ?」
炭治郎は宇髄の溌剌としたその姿に亡き炎柱 煉獄杏寿郎の姿を重ねていた。
柱は強い。
どんな時でも下っ端である自分達の精神的支柱になってくれる。
「そうでなけりゃ能力を分散させて弱い妹を取りこまねぇ理由はねぇ!ハァーーッハ!ちょろいぜ!お前ら‼︎」
「グワハハハ!なるほどな!簡単だぜ‼︎俺たちが勝ったも同然だ!」
まだしっかりと上弦の鬼と戦っていない伊之助だけが宇髄の発言の内容に賛同するが、そうは言っても上弦の鬼だ。
簡単に倒せたらとっくに倒されていることだろう。
二人の発言に面白くなさそうにボリボリと体を掻きむしる妓夫太郎は怪しく笑った。
「その"簡単なこと"ができねぇで鬼狩りは死んでいったからなぁ。"柱"もなぁ。俺が十五で妹が七喰ってるからなぁ」
「そうよ!夜が明けるまで生きていた奴はいないわ!長い夜はいつも私たちに味方するから‼︎どいつもこいつも死になさいよ!!」
堕姫が帯で宇髄と炭治郎に目掛けて攻撃した時、閃光が轟く。
そんなことができるのはこの中で一人しかいない。
「善逸!!」
そう、善逸の雷の呼吸だ。
そしてそれに連動するかのように伊之助が炭治郎の前に出た。
「蚯蚓女は俺と寝惚け丸に任せろ!お前らはその蟷螂を倒せ‼︎分かったな‼︎」
「気をつけろ‼︎」
「おうよ!」
お互いを信頼している。
きっと善逸と伊之助はやってくれると。
炭治郎と宇髄はやってくれると。
信頼関係の元に成り立っているその関係性。
「妹はやらせねぇよ…」
ニヤリと笑う妓夫太郎の真意はわからない。
静かな空気だけがそこに漂っている。
そして善逸は堕姫と向き合っていた。
雷の呼吸で飛ばされていた堕姫は善逸を見て何かを思い出したようだった。
「お前、あの時の…!」
「俺は君に言いたいことがある。」
たとえ不細工、弱いと罵られようとも善逸には譲れない信念がある。
善逸にだって許せないことがあるのだ。