第2章 興味本位
そこから彼女が出てくる様子を暫く見ていたが、やはりまだ顔色は優れない。
込み上げたものは全て吐ききったとは思うが、根源にある体調の悪さは改善していないのだろう。
今すぐ胡蝶のところにでも彼女を連れて行こうかとも考えたが、俺とアイツは今そこで初めて会っただけの関係性。
それを鬼殺隊の柱である胡蝶のところに連れ出すのは職権濫用もいいところだ。
後ろ髪を引かれる思いで自分をキョロキョロと探す女に背を向けて、屋根伝いに自分の屋敷に向かった。
自分の家の門をくぐると雛鶴が俺の姿を見てギョッとした表情で駆け寄ってきた。
そりゃあそうだ。酷い汚れ具合だからな。
「え…?て、天元様?どうされたんですか?」
「まぁ、何だ…。体調悪そうな女に声かけたら吐かれた。」
「は、はい…?」
驚くのは無理はない。
ただでさえそれだけで一般人に声をかけるなんてしない俺。雛鶴はそれをよく知り得ているし、キョトンとするのも無理はない。
「お召し替えを…されます、よね?」
「ああ。着替えて柱合会議に行ってくるわ。」
汚れた隊服を脱ぎ捨て、新しい物に着替えるがふわりと香るあの女の花の匂いが未だに感じられて変な気分だ。
そんなモヤモヤとした気分のまま、産屋敷邸に向かったのだが、そこで紹介された女に目を見開いた。
もちろん驚いたのは俺だけではなくその女も自分を見て驚きを隠せないでいる。お館様の話を聞いていると鬼になった父を自ら討ち、元々薬師として付き合いのあった産屋敷邸に助けを求めにきたとのこと。
そこで漸くあの時の体調不良の原因を悟った。
まだ家族を失って日にちもそう経っていないのだろう。
心身共に体調を崩してもおかしくはない。
そこまで納得すると縮こまるように小さくなっているほの花という女に目を向けた。
あの時と同じように伏し目がちな女を見るとこの再会が必然だったのではないかという気がして彼女から目が離せなかった。