第36章 命の順序
「あ、ああ!け、怪我でしたか!え、怪我?してませんって言ったじゃないですか。」
「してんだろ!分かってんだぞ、俺は!一瞬顔を顰めただろうが。どこだ?見せてみろ!」
「や、え、だ、大丈夫です!ひゃあ、へ、変態がいますーー!!」
宇髄さんがいきなり"此処はどこだ?"みたいに聞いてきたかと思ったら、"怪我はどこだ?"だったらしくて、今上弦の鬼との戦闘の最中なのに随分と呑気な会話だ。
しかしながら腕を引っ張って着物を捲ろうとしてくる宇髄さんに流石に悲鳴が出た。
当然、私から悲鳴が出れば「何だ?」「どうした?」と寄ってくる人たちに助けを求めるため、手を伸ばした。
「何してるんですか、天元様ぁ!ほの花さんのこと手篭めにする気ですかぁ!」
「しねぇっつーの!(もうしたけど)コイツが怪我したらしいから部位確認しようとしてんの!」
「え、何だぁ。そういうことか。ほの花さん、大丈夫ですか?すぐ済みますよ!怖くないです!」
「……え?!ちょ、す、須磨さん…!」
私は別に怖いから助けを求めていたわけでは無い。怪我をした部位が肋骨付近の骨折?なのだから捲られてしまえば、まろび出るのは乳房だ。
流石に外で乳をおっ広げるのは恥ずかしくてたまらない。
須磨さんの後押しも受けて、更にズイッと体を引き寄せてくる宇髄さんに見兼ねて仕方なくその部位を言うことにした。
「わ、、わかりましたよ!言います!言います!ろっ、肋骨です!だから見せられないんです!察してくださいよぉ…!」
「……あー…そゆことね。さっさと言えよな。ったくよぉ。」
頭を掻きながら若干目線を逸らす宇髄さんだけど、此方は恥ずかしさのあまり着物の合わせ目を硬く持った。
「…折れたのか?」
「いや、そ、其処までではないかと…軋む程度なので擦り傷のようなものです。」
「骨軋むのは擦り傷じゃねぇよ。無理すると骨が粉砕して臓器に突き刺さって死ぬぞ。」
「師匠、怖いこと言わないでくださいよ。お願いですから。」
顔を引き攣らせてしまうほどの大惨事を予見させるようなことを言うので今日一番の恐怖を感じてしまった。