第36章 命の順序
「おお、ほの花!!」
ほの花がいればこっちのもんだ!と拳を握りしめる伊之助。
正直、人間を守りながらの戦いは至難の業。縦横無尽に動き回れる帯は複数の攻撃を同時にできるのだ。
突然伊之助の後ろに武器を持って現れたほの花に口を歪ませたのは堕姫の分身。
「…ちっ、アンタ達、仲間だったのかい。」
助けた人たちを前を守るのはほの花。
堕姫の帯の前に立ちはだかるの伊之助。
二人の阿吽の呼吸がその状況を瞬時に作り出した。
帯を叩っ斬る伊之助に帯を払い除けるほの花だけでも堕姫にとっては想定外のこと。
しかし、もっと想定外のことが起こったのはその時だった。
帯に向かってクナイが飛んできたのだ。
「蚯蚓帯とは上手いこと言うもんだね。」
「本当気持ち悪いです!天元様に言い付けてやります!」
「ほの花様!来ていらっしゃったんですね。」
「我々も応戦します!」
其処にいたのは宇髄の妻であるまきを、須磨。
ほの花の元護衛である隆元、大進だ。
ほの花はその姿を見て鼻の奥がツンとして涙が溢れそうだった。
(…生きてた…!!)
探していた六人の内、四人見つかったのだ。きっと残りの二人も生きてる。そう確信したから。
突然、四人も増えたことで流石の堕姫もたじろいだ。此処にいるのは堕姫の本体ではないのだからあまり大勢来られると対応できないかもしれない。
「私たちも加勢するから頑張りな!猪頭!」
「誰だ、テメェは!」
「い、伊之助!宇髄さんの奥様達よ!!あと、男の人は私の元護衛!」
「あ?そうか、お前らが…!よっしゃあああ!」
伊之助は俄然やる気が出た。
これで堕姫と戦うのに気を遣う必要もないし、味方が増えたからだ。
「ああ!でも、期待しないでくださいね!私、あんまり戦えないんで!」
しかし、向かってくる帯にクナイを振り回しながら応戦していた須磨だが、その顔は恐れ慄いている。
自分の強さを過大評価しないところは彼女の良いところでもあるが、案の定、いつもの如く隣にいたまきをから雷が落ちた。