第36章 命の順序
頑なに口を割ろうとしない白虎を見て宇髄は諦めて手にしていた日輪刀を構えた。
「…今からお前の主人のところに行くからよ。離れてろよ。」
白虎の生態がいまいち理解できていない宇髄がそう気遣ったところで、白虎は式神。
技を破られれば消えるがそうでなければ怪我すらしない。
しかし、そんなことは説明もされていない宇髄にわかるわけもない。
一向に退こうとしない白虎に痺れを切らして宇髄はそのまま技を放つことにした。
──音の呼吸 壱ノ型 轟
二刀流の宇髄天元
その太刀は爆発する桁違いの威力を誇る
恵まれた体躯で縦横無尽に振り回すその太刀捌きで、敵を殲滅してきた
気遣っていた白虎を見遣るが近くにいたくせに傷ひとつついてない。
その瞬間、漸くぼんやりと白虎の生態に気付く。
(…何だよ、実体がないのか?)
先ほどの帯の異能とは違うが、陰陽道に関して精通しているわけでもないため、全て薄っすらと想像することしかできない。
「…行くぜ。」
宇髄が出来た大穴に飛び込むと背後を守るかのように後ろについてきた白虎。
その存在を感じながらも宇髄は真っ直ぐと下に降りて行った。
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──ドゴォォン
その頃、宇髄の技によって起きたド派手な爆発音は炭治郎と蕨姫にも届いていた。
「喧しいわね、塵虫が。何の音よ、何してるの?どこ?萩本屋の方ね、それに雛鶴…」
今対峙しているのは目の前の炭治郎一人。
しかし、捕らえた善逸も然り、鬼殺隊が何人で此処に潜入しているのかまだしっかりと把握できていない様子の蕨姫は炭治郎に問うた。
「…アンタ達何人で来てるの?五人?いや、六人?」
「…言わない。」
六人と言えば炭治郎、善逸、雛鶴、正宗、まきを、隆元の六人か。
まだ柱が来ていることは悟られていない。
何としても早々にそれだけはバレるわけにはいかない。
炭治郎は口を噤む。
「正直に言ったら命だけは助けてやってもいいのよ?」
状況を正確に把握するためには炭治郎から聞き出すのが一番手っ取り早い。
蕨姫は怪しげな視線を炭治郎に向けている。