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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第36章 命の順序





「鬼が店で働いていたり、巧妙に人間のふりをすればするほど、人を殺すのには慎重になる。バレないように。」


炭治郎の発言に伊之助も顎に手を当てて大きく頷く。


「そうか。殺人の後始末には手間がかかる。血痕は簡単に消せないしな。」


此処は遊郭だ。
行動するにはもってこいの時間帯の場所。
しかし、鬼といえど此処まで周りに人に囲まれている場所で人を殺すには神経をすり減らすほど気を遣う。
それが炭治郎が導き出した答えだった。


「俺はほの花も善逸も宇髄さんの奥さんもほの花の元護衛の人たちも全員生きていると思う。そのつもりで行動する。全員必ず助ける。」


炭治郎の目が真っ直ぐに伊之助を捉えると徐々に口角が上がっていく。


「伊之助にもそのつもりで行動してほしい。そして絶対に死なないでほしい。それでいいか?」


あくまでこれは鬼に悟られないように動くため。
悟られてしまえば全員殺されてしまうかも知れない。
潜入調査を始めたからには人を助け出すまでは穏便にことを済ませたい。


「…お前が言ったことは全部な。いま、俺が言おうとしてた。」


二人の視線はがっちり絡み、大きく頷きあうと、再び元いた店へと帰っていく。
行動を起こすのは夕方だ。


それまではまだ隠密に事を進める。






✳︎✳︎✳︎





伊之助と別れた炭治郎は夕刻
一人、久しぶりに禰󠄀豆子の箱を背負うと鯉夏の部屋の前にいた。


中には女の子達との楽しそうな会話が聴こえてくるが、「ご飯を食べておいで」という優しい声と共にその部屋の中は静まり返った。



ゆっくりと炭治郎は歩みを進めて、鯉夏の後ろに跪くと「鯉夏さん」と声をかけた。
鏡を見たままの鯉夏に向かい、炭治郎は構わず話をし始める。


「不躾に申し訳ありません。俺は"ときと屋"を出ます。お世話になった分の食事代などを旦那さん達に渡していただけませんか。」


手に持っていた白い封筒を鯉夏に差し出すと、振り返った彼女が炭治郎の姿を見て驚いた顔をしている。


「炭ちゃん…その格好は…」


「訳あって女性の姿をしていましたが、俺は本当は男なんです。」


「あ、それは知ってるわ。見ればわかるし、声も…。」



もちろんバレているなどと思っていなかった炭治郎は話したいことの前に出鼻をくじかれる羽目になった。

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