第36章 命の順序
連絡が途絶えていた嫁三人と元護衛三人だけでなく、今度は善逸とほの花までもが行方知れずになった。
これは只事ではない証拠。
善逸の実力は把握できていないが、ほの花の実力は宇髄自身しっかりとわかっている。
自分の嫁より戦えるのを知っているし、そこらへんの鬼であれば負けやしない。
それなのに連絡が途絶えた。
宇髄は後悔していた。
此処にほの花を連れてきたことを。
三人を連れてきたことを。
まさかそこまでの鬼とは思ってもいなかったのだ。
「お前らはもう"花街"を出ろ。階級が低すぎる。此処にいる鬼が"上弦"であった場合対処できない。」
宇髄はゆっくりと立ち上がると一つ息を吐く。
今頃後悔したところでほの花はいない。
善逸も。
雛鶴もまきをも須磨も
ほの花の護衛達も。
体中に蔓延る怒りが拳に伝うとそれを握りしめた。
「消息を絶ったものは死んだと見做す。あとは俺一人で動く。」
それは認めたくない事実。
自分が潜入調査などさせたがために、命を奪ってしまったかも知れない事実に愕然としてしまう。
それでも自分は鬼殺隊の柱。
今此処にいない者より後ろにいる炭治郎と伊之助の命を守ることが優先だ。
「い、いえ…!宇髄さん!俺たちは…‼︎」
「恥じるな。生きてる奴が勝ちなんだ。機会を見誤るんじゃない。」
「ま、待てよ、おっさん…!」
炭治郎と伊之助の制止にも宇髄は止まらずにその場から去った。
跡形もなく消え去ったそこに二人はキョロキョロも辺りを見渡したが、宇髄の姿は見られなかった。
「………」
「………」
暫く沈黙があった後、炭治郎が伊之助に向き合った。
「…俺達が一番階級が下だから信用してもらえなかったのかな?」
「俺たちの階級は上がってるぞ。いま、"庚"だ。」
炭治郎は階級が上がったことも、階級の示し方も知り得てなかったため驚いたが、伊之助の話に耳を傾ける。
"藤花彫り"という特殊な技法で手に階級が浮かび上がる鬼殺隊の証を初めて知った炭治郎はキョトンと首を傾げるしかなかった。