第36章 命の順序
神楽家の女児が生まれる確率は極めて低い。
仮に生まれたとしても秒で殺してやれば良いだけの話。血に触れなければ大したことないただの人間だからだ。
鬼舞辻は妙に落ち着いていたし、神楽家の女児を探し出せば殺してきた。
殺さずとも神楽家は無闇矢鱈と鬼舞辻の前に姿を見せることは無くなっていった。
最後に見たのは100年前だ。その時点で陰陽師一族は虫の息。既に神楽家しか残っていなかった。
そのまま衰退し、滅びていくことは安易に予測が立ったのだが、鬼殺隊と神楽家が秘密裏に結託し合っている噂を耳にした鬼舞辻は久しぶりに神楽家を探した。
100年ぶりに探し出したその村は随分と小さくなってしまっていて、鬼舞辻自身が手を下さずともいいと思うほどの衰退ぶり。
殺してしまえばこれであの医師との因縁も消える。
青い彼岸花の情報は結局、分からなかったがいつの時代も神楽家は口を割ることはなかった。
仲間がどれほど殺されようと。
知っていたが鬼舞辻に知られないために必死に隠したのか。
薬の調合の仕方のみ知り得ていて、"青い彼岸花"の行方は知らなかったのかもしれない。
今となってはわからないが、衰退した神楽家など生きていても死んでいても大した問題ではない。
ただ鬼殺隊と合流する手筈を整えていたのであればそれは由々しき事態だ。
反対勢力が強大になる前に摘んでおく必要がある。
そうして決行されたのがちょうど一年ほど前。
ほの花達が里にいない間のことだった。
まさか生き残りがいたとは思わなかっただろう。
しかも、生き残っていたのが鬼舞辻が唯一危惧していた神楽家が隠し通していた女児だったのだから。
人の想いは不滅だ。
神楽家が滅びようとも希望の光は終えない。
"蕨姫"が見たその人物こそが神楽家の最期の希望だったのだから。