第7章 君は陽だまり
な、な、何?!
目の前には宇髄さんの顔。
この光景はここ最近よく見る。
そして唇に温かい感触。
これも最近よく感じる。
目を閉じて私の唇に何度も口付けを落とす彼に"目を閉じるんだった!"と思い出され、慌てて瞑ってみる。
たださっきまで凄んでいた男性はその場に止まったままだし、簡単に言えば私たちは自分達の口付け現場をその人にお披露目していることとなる。
破廉恥すぎる。
宇髄さんも宇髄さんだ!何故こんなことをするのだと苦言を呈したいところだが、彼が来てくれて一番喜んでるのは自分であって、心の中であっても彼に苦言を呈することは控えたいところ。
それなのに温かい感触唇に広がっていくとだんだん彼のそれに酔いしれるように何も考えられなくなってしまう。
宇髄さんの匂いが自分を包み込むようだ。
一番安心する腕が支えてくれていると分かるだけでふわふわと脳が甘い蜃気楼を引き起こす。
ぼんやりとそれに酔いしれてしまっていたためうっかりしていたがこの状況はまずい!思い出したのは漸く宇髄さんの顔が離れた時だった。
私のことを片手で抱き寄せると腰が抜けて震えている喜一さんに向かってトドメを刺すが如く言葉を放った。
「今回は大目に見るが、次うちのほの花に付き纏ってみろ。本当に血祭りにあげてやるからな。分かったらとっとと帰れ。」
「は、は、は、はぃいいい!す、すみませんでしたぁ!!」
そんなことを言われて不謹慎ながら嬉しくてたまらなかった私は無意識に彼に擦り寄ってしまった。
震えながら四つん這いで逃げ帰る彼をある程度見送ると宇髄さんの声が頭から降ってきた。
「さぁて…どういうことか説明してもらおうか?ほの花。まず、その隊服は何だ?」
宇髄さんの顔は笑っているのに全然目が笑ってない。これは本当に怒っている時のやつなのだろう。
そしてこの服についてやっぱり怒るんだと雛鶴さん達の言ってたことが本当だったと今更ながら後悔をしてしまった。