第7章 君は陽だまり
俺が本気で走るなんざ、鬼の襲撃があるときかほの花が絡んでる時だと自負している。
今回は後者だが、同時に己の足が瞬足で良かったとホッとしてしまうのは屋根、木、屋根、木…と障害物を避けて向かったため、おかげでよく見えること。
遠くの方に見えるのは町の境目だ。
そこにいるのは夕陽に照らされてキラキラしている栗色の髪。そして見覚えのある花飾りが俺を導いてくれる。
こちらに背を向けているが、俺がほの花を見間違うわけがない。
「…さぁて、どういうことかなぁ?ほの花。」
隣には知らない男。
そして身につけている服は隊服だ。恐らく採寸して出来上がったものを鬼殺隊の縫製係が持ってきたのだろう。
だが、ふわふわとした透けてる布が短いスカートから覗いているが、俺ですら一度しか見たことないというのに少しの太ももから膝下までは白い脚が披露されていて顔が引き攣る。
音もなく近寄ると分かりきっていたが、どうやら言い寄られているご様子で…。
そんなことが分かってしまえば俺が怒り爆発寸前なのは言うまでもない。
「そろそろ名前も教えて欲しいなぁ?僕は喜一って言うんだ。」
「へぇ、そうか。その喜一は俺のほの花に何をしようとしてんだ?」
「……え?」
ほの花の隣に並び、腰を抱き寄せるとその男をこれでもかと睨みつけてやる。
その瞬間のバケモン見たみてぇな顔でガタガタと震えている男はどうやらただの一般人。
ここでぶん殴れば殺人事件になっちまうな。せめて鬼ならば切り刻んでやると言うのに。
「う、う、宇髄、さん…。」
「ちっとも帰ってこねぇから探しに来たら男に追いかけ回されてるたぁ、どういうことだ?ほの花。」
「え、や、そ、それは…!」
ほの花にことの次第を聞いてみるが狼狽えてオドオドするだけ。
そして勿論本気ではないが、少しくらいの脅しはいいだろ?と血祭りにしてやる発言で腰を抜かした男を見下ろすと必死に宥めてくるほの花を見てため息を吐いた。